研究室の宝物紹介−パルテノン神殿の彫刻−(中村るい先生)

 ここ十数年ほど、共同研究「パルテノン・プロジェクト・ジャパン」に参加しています。複数の大学の研究者が集まって、主にパルテノン神殿の彫刻装飾について調査、考察をしています。調査対象の神殿のフリーズ装飾は、都市国家アテネの守護女神アテナのための祝祭行列を表した浮彫で、ギリシャ彫刻の傑作とみなされています。全長160メートルに及ぶ帯状の彫刻で、現存部分の約3分の2は、現在、ロンドンの大英博物館に展示されています。

 このフリーズ浮彫の断片の複製(レプリカ)(実寸40×34センチ)が、研究室にあります。大英博物館で入手しました。実物大で、パルテノン彫刻を考える上での貴重な資料となっています。真摯な眼差しの若き騎手は、どのような宗教観をもっていたのでしょうか。また、どんな夢をもって生活していたのでしょうか。

 美術作品は、当時の社会へ思いを馳せるきっかけを作ってくれます。美術を研究することの楽しさと難しさを再確認できる、研究室のささやかな宝物です。