文化社会学部アジア学科の山花京子教授が「ヒヒ神像」の分析に取り組んでいます。

文化社会学部アジア学科の山花京子教授が、東海大学総合研究機構の「2021年度クラウドファンディング型社会発信研究補助計画」に採択された研究課題「古代エジプト人の祈りを、神像の科学的調査から読み解く!」で本学が所蔵する古代エジプトコレクションの「ホルスの眼を捧持するヒヒ像(通称:ヒヒ神像)」の分析に取り組んでいます。8月23日には、本研究の最終段階として、工学部機械工学科の葛巻徹教授の協力を得てヒヒ神像の金属製冠のマイクロサンプリング(極微少試料の採取)と元素分析を実施しました。

山花教授は昨年7月にクラウドファンディングが成立した後、マイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)や東海大学イメージング研究センター(TICAR)、外部研究機関との共同研究で、ヒヒ神像の表面に残存する顔料の蛍光Ⅹ線(XRF)分析による組成分析やX線CTスキャンによる内部構造の把握、樹種同定、C14放射性炭素年代測定などを実施してきました。

その結果、ヒヒ神像の本体と台座部分では制作年代が異なることが判明。これを受けて、ヒヒ神像の顔と冠、手に持つ「ウジャト眼」護符といった金属部分と本体の関係を知る必要が出てきました。冠部分は昨年度に走査型電子顕微鏡(SEM)による元素マッピング調査を行い、銅合金であることが確認されましたが、金属は現在では青緑色の腐食層に覆われており、正確な合金の状態が分かっていませんでした。

銅合金の種類が分かれば金属部分が作られた年代が推定できるため、今回は、葛巻教授の研究室のマイクロマニピュレーターシステム「アクシスプロ」を使い、冠の表面から深さ方向に30㎛ずつ掘り下げ、腐食層を除去した金属サンプルを採取。

その後、採取した金属の状態を本学設置の最新型SEM(JSM-7100F、JEOL)で確認するとともに、SEM付設のエネルギー分散型分光装置で組成解析を行いました。

葛巻教授は「古代エジプトの遺物は希少価値が非常に高いため、アクシスプロによる微少サンプリングを用いることで研究対象を大きく傷つけることがないよう分析しました。採取したサンプルの分析結果を活用することで古代エジプト研究のさらなる進展につながればうれしい」と語りました。

山花教授は、「葛巻先生をはじめ学内外で多くの方々に協力いただきました。1点の文化財に対してこれだけ多種多様な調査を行ったのは、世界でも例があまりありません。ヒヒ神像の調査報告書は貴重な資料となると思います」と話しています。

また、クラウドファンディングの成果報告書はプロジェクトを支援してくれたサポーターへの返礼品として年内に配布される予定です。