ノルウェーのトロムソ市の映画祭について(1)

 2023年1月16日〜22日に開催された第33回トロムソ国際映画祭(Tromsø International Film Festival)の現地調査を行いました。
(*映画祭WEBサイト:https://www.tiff.no/en/

野外での映画祭オープイングイベント(筆者撮影、2023年1月16日)

 トロムソ市(Tromsø)はノルウェー北部地方の中心都市で人口は約7万人です。トロムソには1916年6月に開館したノルウェー最古の映画館「バーデンス劇場(Verdensteatret)」があります。市の中心部を通るメインストリート沿いにあり、座席数は216席で、現在も映画館として営業を続けています。館内の壁画は開館当時のものが残されています。映画館に入ってすぐのホールにはカフェ兼バーがあり、そこで購入したコーヒーやビールを館内に持ち込んで映画を楽しむことができます。上映後には映画を観た人たちで満席になる賑わいです。
 バーデンス劇場はトロムソ市が所有する「市営映画館」です(2006年からトロムソ国際映画祭財団が運営を担当していますが、保有者はトロムソ市のままです)。ノルウェーの映画館の多くは自治体が所有・運営する市営映画館(municipal cinema)です。これについては『東海大学紀要文化社会学部』7号(2022年3月)に掲載された論文「文化政策と映画館:ノルウェーの映画・映画館政策と市営映画館を事例として」を参照してください。
(*紀要論文:https://www.u-tokai.ac.jp/ud-cultural-and-social-studies/kiyou/

バーデンス劇場の外観(筆者による撮影、2023年1月16日)
バーデンス劇場の内部(筆者による撮影、2023年1月19日)

 トロムソ国際映画祭はバーデンス劇場を含めて市内9カ所が会場となり、2023年は103作品が上映されました。日本映画は『Love Life』(監督・深田晃司)と『ノイズ』(監督・廣木隆一)が上映され、そして子供向けの野外上映会で『となりのトトロ』(ノルウェー語吹替)が上映されました。
 「ノルウェーのトロムソ市の映画祭について(2)」では、野外上映会の様子を紹介します。1月のトロムソは最低気温マイナス6度、最高気温でもマイナス2度ほどです。雪がちらつく中で、防寒の準備をして(座席には分厚い毛布が用意されていたり、温かい飲み物が配られたりもします)、たくさんの観客が野外で映画を楽しんでいました。

 心理・社会学科准教授 石垣 尚志