【おしえてセンセイ!12】ドローンは今後どんな分野で活躍できるの?

A.地震や豪雨被災時などの「災害救助」に活用できます

工学部機械システム工学科 山本佳男先生

無線操縦で空を飛ぶことができる「ドローン」はすでに、航空写真の撮影をはじめさまざまな分野で活躍しています。研究も盛んにおこなわれ、過疎地に薬や物を運んだり、電波塔や橋梁といった危険な場所の安全点検などへの活用が検討されており、2050年ころには国内だけで1兆円を超える産業に発展するともいわれています。

そんななか、私たちの研究室で注目しているのが、「災害救助」への活用です。近年、日本各地で大きな地震や豪雨災害が発生しています。がけ崩れや土石流が起きたり、泥に埋もれた現場では、目視ではどこに人がいるのかほとんどわかりません。また、道路が寸断されると、孤立した集落の状況把握は困難を極めます。災害発生時に水や食料の補給のない状態で被災者の生存率が急速に下がる限界を「72時間の壁」と呼びますが、72時間の半分が夜間ということもあり、迅速かつ正確な状況把握ができないために、救えたはずの命が失われてしまっているのが現状です。

そこで研究室では、3D画像解析で地形などを調べる「3D-LiDAR(3次元レーザー検知・測距)」と熱を感知する「赤外線センサ」、複数のマイクから音源の方向と距離を割り出す「マイクロフォン・アレイ」を多重的に使用して、救助が必要な被災者や孤立した集落の情報を自動的に収集・通報するシステムの開発を行っています。重要なポイントはこれら3種類の方法はいずれも夜間で使用可能という点です。2011年3月に発生した東日本大震災当時、東北地方の日の出は6時頃、日の入りは17時半過ぎでした。つまりこの日は、12時間半ほどが夜だったのです。その夜間を被災状況の活用や被災者発見に活用できれば、より多くの人を助けられた可能性があります。このシステムが完成すれば、夜間における二次災害の危険性が高い地域での被災者捜索をより効率よくできると期待しています。

各地の紛争地では、ドローンが「兵器」として使われてしまっているのも事実です。でも、科学技術は本来、人類の発展と幸福のために使われるべきもの。皆さんも、よりよい社会づくりのためにドローンがどう活用できるかを、ぜひ考えてください。