【おしえてセンセイ! 11】Q. ペロブスカイト型太陽電池って何がすごいの?

A.日本の資源を活用して低コストで作れる新技術として注目を集めています。

工学部電気電子工学科 金子哲也先生

地球温暖化への懸念が高まり、既存の発電技術と再生可能エネルギーを組み合わせた新しい電力供給網の整備が世界各地で進められています。必要なエネルギーをより安定的に供給しつつ、温室効果ガス排出量の少ない技術として風力・水力・地熱などを使った発電技術が開発されていますが、なかでも主力資源として注目されているのが太陽光発電です。

この太陽光発電に使う太陽電池は現在、比較的安価で量産可能なシリコン型太陽電池が主流です。20年以上の長期にわたって安定した発電ができる耐久性と高い効率が魅力ですが、最近では日本が世界有数の産出量を誇るヨウ素を使用し、より低コストで高効率な発電が期待できるペロブスカイト型太陽電池が注目を集めています。

ペロブスカイト型は製造コストが低く、軽量なのが特徴です。また、シリコン型太陽電池と重ねたタンデム方式では、より長い波長の光を電力に替えることも可能です。太陽電池は、さまざまな無機物・有機物材料で作製されていますが、ペロブスカイト型太陽電池は、その両方どちらも使うハイブリッド型太陽電池と言えるでしょう。私の研究室では、太陽光発電の発電効率向上に役立つ「ヨウ化銅」という無機材料をより低コストで作り出す技術の研究をしています。パウダー状にしたヨウ素を窒化銅に塗布する方法がありますが、ヨウ素の塗布面に不均一な凹凸や穴ができて発電効率が下がってしまうという欠点がありました。これまでの研究で、窒化銅をヨウ素溶液に浸す方法を使えば、より滑らかな表面を作り出すことができ、既存のものよりも効率が上がることが確認できています。さらに均一で穴の無い膜を大面積に作ることができれば、より一層の発電効率と安定性の向上に貢献できると期待しています。

ペロブスカイト型太陽電池には湿気や酸素などの影響を受けやすく、劣化しやすいなどまだまだ弱点もあります。ベロブスカイト型に限らず、太陽光発電の技術は、物理学、化学、材料科学など、いろんな学問を総合して成り立っています。だからこそ新たなアイデアやアプローチが生まれやすい分野だとも言えます。多くの分野に目を向けながら、各技術のバランスを取る必要がある点は、まさにこの分野のだいご味です。総合工学である太陽光発電技術の未来を、一緒に探求しませんか。

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かねこ・てつや 1982年埼玉県生まれ。東海大学電子情報学部電気電子工学科を卒業後、東京工業大学大学院総合理工学研究科物質科学創造専攻を修了。博士(工学)。専門は、太陽光発電、太陽電池など