大学院工学研究科の市川さんと中安さんが自動車技術会2026年春季大会の「学生ポスターセッション優秀賞」を受賞しました

大学院工学研究科機械工学専攻の市川直杜さん(修士2年次生)と中安翼さん(修士1年次生)が、5月27日から29日までパシフィコ横浜で開催された自動車技術会2026年春季大会に参加。このほど各賞の受賞者が決定し、両名共に「学生ポスターセッション優秀賞」を受賞しました。

市川さんは、「FCC構造とBCC構造のSUS材の破断過程の評価による水素脆化プロセスの比較」をテーマに発表しました。水素が金属内部に入り込むことで材料が脆くなる“水素脆化”の研究を専門とする市川さんは、未だ解明されていないそのメカニズムを明らかにしようと、最もよく用いられる金属であるステンレスにおいて、FCC(面心立方)構造とBCC(体心立方)構造の2つの結晶構造を有する鋼種を比較。通常ナノスケールで生じる現象をミリメートル程度の肉眼で確認できるサイズで変化を捉えられる手法を用いて、水素がどのような過程で材料を破断させるのかを調査しました。「自動車製造の現場に携わる方々に、材料の基礎研究を評価していただきとてもうれしく思います。私が取り組む基礎研究は、特定の用途への応用を目的としたものではありませんが、ステンレスの性質に関わるメカニズムを明らかにすることで、用途に応じた材料の性能や耐性を予測することができます。技術者の方々の経験則に基づく知見や技術を科学的に証明できれば、安価な材料の選択や作業の効率化にもつながると期待しています」と話します。

中安さんは、「低温度熱処理を用いた高性能自動車用構造部材(CFRP)の変形抵抗向上に関する研究」と題して発表。レーシングカーや航空機などでは、軽量で高い性能を持つ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とアルミニウムハニカムを接着した構造部材が用いられている一方、接着部分が剥離しやすいことが課題となっています。今回の研究では、接着剤に熱処理を施すことで部材の重量を増やすことなく剥離を抑え、構造部材の性能を高める手法を考案。重量を増加させず、特殊な設備も必要としないことから安価に取り入れることができます。中安さんは湘南キャンパスで活動するToCoチャレ「Tokai Formula Club」に所属しており、2025年9月の「学生フォーミュラ日本大会」では今回の技術を用いてマシンの性能を向上させ、マシンの軽量化や耐性などが評価され「ベストコンポジット賞」を受賞しました。「自動車技術会における東海大生の受賞は今回が初めてであり、大変光栄に思います。これまでの大学生活で日々研究してきた成果や、学生フォーミュラの活動を通じて積み上げてきた成果を評価していただきうれしい気持ちでいっぱいです。発表時の講評では、技術者の方々から実際の現場における作業工程などについてもご意見をいただけたので、今後の研究やプロジェクト活動に生かしていきたい」と語っていました。

指導にあたった内田ヘルムート貴大准教授(工学部機械工学科)は、「中安さんは炭素繊維、市川さんは金属と、一見すれば全く別の材料ですが、自動車など一つのものを作り上げるには約1万個の部品が必要であり、どれか一つに不具合があると組み上げることができません。応用研究の方が社会に役立っていると捉えられがちですが、工学の究極的な目標である安全の確保には材料の性質や耐性を知るための基礎研究が欠かせず、実は表裏一体の存在です。今回の功績をポジティブなきっかけとし、教員を追い越すよう成長していってもらいたい」と話していました。