工学部生命化学科の水谷隆太教授が6月1日から8日まで、アメリカ・シカゴ近郊にあるアルゴンヌ国立研究所Advanced Photon Sourceを、本学の教員として初めて利用しました。
アルゴンヌ国立研究所は、米国エネルギー省が所管する同国屈指の研究施設として知られ、エネルギー科学から生物学・医学・物質科学などに至る幅広い分野で、最先端の研究を行っています。湘南キャンパスの10倍以上の広大な敷地内には、様々な施設・設備群が設置されていますが、今回利用したAdvanced Photon Source (APS)は「大型放射光施設」と呼ばれるもので、同研究所内でも主要な研究施設となっています。
実験では、医療用CTスキャンの原理を応用したナノトモグラフィ法によりヒト脳細胞の微細な三次元構造を解析しました。水谷教授は、これまでにも兵庫県佐用町にある理化学研究所の大型放射光施設SPring-8を利用し、神経ネットワークの解明やタンパク質の構造解析などに取り組んできています。
アルゴンヌ国立研究所での実験にあたっては、昨年9月に本学と同研究所の間で合意文書を締結。期間中は、水谷教授に加えて、生命化学科の卒業生で研究に従事している雑賀里乃・臨時職員が研究所内のゲストハウスに滞在し、同研究所のDe Andrade博士やDe Carlo博士と共同で、ナノトモグラフィ法による測定実験を行いました。また、神経科学を専門とするKasthuri博士と今後の研究についても協議しました。
水谷教授は、「今回得られたデータをもとに神経ネットワークの三次元構造を解析することで、精神疾患の発症メカニズムの解明や診断法の開発にもつながると期待しています。私自身、ヒトの疾患について少しでも明らかにするため、今後も地道な研究を積み重ねていきたい」と話しています。