土木工学科の笠井教授が「産学官連携功労者表彰」の環境大臣賞を受賞しました

工学部土木工学科の笠井哲郎教授が、8月28日に「第14回産学官連携功労者表彰」環境大臣賞を受賞しました。「産学官連携功労者」は、企業、大学、公的研究機関などにおける産学官連携活動において大きな成果を収め、また、先導的な取組を行うなど当該活動の推進に多大な貢献をした成功事例に対して、その功績を称えることで我が国の産学官連携のさらなる進展に寄与することを目的に行われているものです。このうち環境大臣賞は、地球環境保全や公害の防止、自然環境の保護などの視点から特に顕著な功労があった個人やグループに贈られています。笠井教授は長年にわたって、コンクリートの生成の過程で生じる廃棄物や解体されたコンクリート塊の再利用に関する技術の開発に従事。今回は、コンクリート構造物の施工の際に生じる「戻りコンクリート」を再生利用し、従来技術に比べ二酸化炭素の排出を大幅に低減できるだけでなく、高い強度を持つ「低炭素コンクリート」の実用化に世界で初めて成功した技術が高く評価されました。
コンクリートは通常、材料であるセメントや水、砂・砂利(骨材)などを工場のミキサーで混ぜ、アジテーター車で現場に輸送して用いられます。現場では工事の進捗に支障が生じないように少し多めに生コンを発注します。このため、ほとんどのコンクリート施工現場では、残余の生コン(戻りコンクリート)が発生します。これまではこの余った分は廃棄物として処理されてきました。鹿島建設と三和石産と共同で開発した技術では、戻りコンクリートを洗浄・分級処理し、回収した細骨材(砂)、粗骨材(砂利)をコンクリート材料として有効利用すると共に、残りの懸濁液(生コンスラッジ)から固形微粒分を回収し、乾燥させて「SRセメント」を生成。このSRセメントと産業副産物混和材を混合して使用することで、通常のポルトランドセメントと同等の性能を発揮でき、鉄筋コンクリート構造材などに利用できる強度を生み出すことを可能にしました。産業副産物混和材は、鉄鉱石から鉄を生成するときに発生する高炉スラグ微粉末や石炭発電所から発生するフライアッシュであり、本技術は、これらの副産物(廃棄物)の高度有効利用も可能にするものです。また、通常セメントを生成する際にはセメント生成量1トンあたり約0.7トンの二酸化炭素が生じる欠点がありましたが、この技術を用いればその発生を9割ほど減すことが可能になっています。なお今回の研究は、環境省の平成24年度環境研究総合推進費の支援を受けており、三和石産から本学科卒業生の大川憲さん(2003年度卒)も参加し、本賞を同時に受賞しています。

笠井教授は、「生コン業者には中小企業が多く、全国で年間200万㎥に及ぶ戻りセメントは経営を圧迫する要因なってきました。あまり知られていないことですが、日本国内ではコンクリート構造物を解体して発生するコンクリート廃棄物の再利用率は現在、99%以上ですが、戻りコンクリートの再生利用はほとんどされてきませんでした。今回の技術の実用化を普及させ、コンクリートの地産地消や完全リサイクルを実現させたい」と語っています。

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