学生が日本建築学会優秀修士論文賞と優秀卒業論文賞を受賞しました

日本建築学会の優秀修士論文賞と優秀卒業論文賞がこのほど発表され、今年3月に大学院工学研究科建築学専攻を修了した猪狩渉さんが修士論文賞を、建築学科を卒業した今泉奈々絵さんが卒業論文賞をそれぞれ受賞しました。優秀修士論文賞と卒業論文賞は、全国の大学から応募のあった修士論文と卒業論文から各15作品が選ばれるもので、建築分野では最難関の賞です。本学からはこの10年で卒業論文賞を6回受賞。修士論文賞は1999年以来の受賞となりました。

猪狩さんの修士論文テーマは「戦前期の農村経済更生事業における住宅改善の施策と実態――東北地方の開墾事業・農村指導者教育にみる先進性」です。これまでほとんど研究されてこなかった東北の開墾事業や農村指導者教育などの農村経済更正事業にスポットを当てた点、その施策によって建てられ、現在も使われている住宅を実測調査した点などが評価されました。「研究室のフィールドワークで山形県の雪の里情報館にいき、戦前の農村住宅改善の議事資料を発見したことがきっかけでこの研究を始めました。福島県出身なので、東北地方の住宅改善に興味を持ちました」と猪狩さん。開墾地の住宅というと貧しく小さいという先入観がありますが、昭和初期には政策的に改善が行われ、共同食堂や講堂も備えた社宅に近い近代的なものだったことを明らかにし、従来のイメージを覆しました。猪狩さんの研究は在学時に在籍していた小沢朝江教授の研究室で引き継がれており、今後の進展に期待がかかります。

今泉さんは卒業論文「隠居の住宅史――民家における2世帯居住の地域差と平面の関係」で受賞。二世帯居住に着目し、各県が行った民俗調査報告書などから、戸主が生前に戸主権を譲る「隠居」での住まいの様態を調査。二世帯居住は同居型・別居共食型・寝食分離型・分家型の4種類に分類され、その様態に地域差があることを踏まえ、複数の様態が混在する福島県と愛媛県に着目。同居型の地域では寝室を増築するため平面が変る一方、別居型の地域では古い平面が継続するため、民家の間取りに違いが出てくることをまとめました。高齢化が進む現代の日本では二世帯住居へのニーズが高まっているため、社会的に重要なテーマであると評価されました。今泉さんは、「私は二世帯住居に住んだことがないのですが、研究すればするほど奥が深く、隠居の種類にも地域差がある点がとても興味深かったです。今まで研究されてこなかった分野に取り組む面白さを感じ、居住の多様性に気付くことができました」と笑顔で振り返りました。

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