工学部応用理学科(工業化学専攻)を1962年度に卒業した武紘一さんがこのほど、文部科学大臣表彰で科学技術賞「技術部門」を受賞。4月19日に文部科学省で表彰式が催されました。同賞は、科学技術に携わる研究者、開発者の意欲や日本の科学技術水準の向上を目指し、顕著な成果を収めた開発者に贈られるものです。
武さんが開発したのは、「吸遮音性に優れた通気性サンドイッチパネル」という防音材で、吸音特性を生け花の剣山に使われている吸水性の硬質フェノールフォームに見出したのです。従来の防音材は、グラスウールという繊維系吸音材が使われており、この材料は柔軟で低周波音を吸収しないという短所がありました。武さんは、軽量で、吸音に適した硬質フェノールフォームに着目。この材料は脆いため工業材料には不向きとされてきましたが、脆さを逆利用し、蜂の巣状のハニカム材に押し込むことでその弱点を克服し、商品化へと至りました。2006年には基本となる特許を取得し、高速道路や輸送機器、工場、一般住宅等の騒音対策に、又音響分野では音質向上などで使用されています。2011年に発生した東日本大震災の際には、仮設住宅の騒音対策に防音材を無償で提供し、騒音被害の解消がテレビや新聞をはじめ多くのメディアで取り上げられました。さらに、15年には日本発明振興協会と日刊工業新聞社が共催する発明大賞で最高位の本賞も受賞しています。
武さんは、「在学時代には研究と同時に、柔道部の3代目主将や体育会常任委員長を務めた中で、開拓する力や挑戦することの大切さを学びました。学園の創立者である松前重義博士も、前を向いて進む重要性を私たちに説いてくれました。技術開発は、挑戦の連続であり、大学時代の経験があったからこそ、今の成果があります。これからも世のため人のためになる開発を進めていきたい」と語りました。