スカパーJSAT株式会社と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、本学が共同で進める研究プロジェクト「衛星通信を利用するドローンの運行管理システムの開発」がこのほど、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の公募事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」に採択されました。この事業は、物流やインフラ点検、災害対応などの分野で活躍できる無人飛行機やロボットの開発を促し、社会実装するためのシステム構築や飛行試験などに取り組むものです。本プロジェクトでは、海抜500m以上の高度で飛ぶ無人ソーラー飛行機を用いて複数台のドローンの運航管理を行うことで、通信衛星を介して目視外を飛行するドローンからさまざまな情報を収集する世界初のシステムの開発を目指しており、11月27日から12月1日には福島県・福島スカイパークで第1回目の飛行実験を実施しました。
地震や大雨などの大規模災害時の状況把握には、すでに人工衛星画像やドローン(無人航空機)が用いられていますが、人工衛星では撮影できない地域があるほか、ドローンは山間部や洋上など地上通信網が届かない地域では運用できないという課題がありました。本プロジェクトでは、世界中どこでも電波が届く人工衛星による通信を利用し、太陽電池をエネルギー源に長時間飛行することが可能な無人ソーラー飛行機でドローンを運行管理することで、小型で安価なドローンの目視外飛行により、現地の状況を短時間で広範かつ詳細に把握できるシステムの開発を目指します。ドローンの運用では、すでにNICTなどがヘリコプターで管制しながら同時運用する技術の研究を行っていますが、エネルギー補給が必要になるため長時間の運用ができないといった課題がありました。無人ソーラー飛行機はエネルギー補給が不要なため、電源が十分にない地域でも運用しやすくなるほか、遠隔操作システムによって道路が寸断されるなど現地に入れない場所の2次災害防止やパトロールなどにも貢献できると期待されます。本学工学部からは、航空宇宙学科航空宇宙学専攻の福田紘大准教授をリーダーに、電気電子工学科の木村英樹教授、工学部の新井啓之研究員らが参画。主に高高度無人飛行機の開発を担当します。
11月27日からの飛行実験では、本学が所有するソーラー無人飛行機「サンファルコン2」を使って海抜約680mの上空における飛行特性を確認したほか、高高度環境下における発電量計算のためのデータ取得、ドローンとの通信を想定した地上との通信特性試験などを行いました。福田准教授は、「東海大学ではこれまでサンファルコン1と2の開発などを通して技術的なノウハウを積み重ねています。今回のプロジェクトへの参画はそうした実績が評価されたもので、大変光栄に思っています。サポート役として学生も参画する予定となっており、プロの仕事に触れながら実践的なスキルを学ぶ良い機会にもなると期待しています。災害時の現地調査に使用するためには、高高度をゆっくりと飛行できる機体にする必要があり、技術的な難しさもありますが、これまで培ってきたノウハウを生かしてプロジェクトを成功させ、迅速な災害対応や救助に貢献できるシステムを作りたい」と話しています。