工学部電気電子工学科では2月14日に湘南キャンパスで、同窓生を招いて特別講演会を開催しました。学科の同窓会が2017年4月に「電気電子工学会」として再発足したのを記念するとともに、森本雅之教授の退職記念講演を兼ねて実施したものです。会場には多数の学生も参加し、同窓会の先輩たちから新会員に向けた歓迎の意と、新社会人に向けた激励のエールが送られました。
森本教授は、「電気自動車はどうなるのか~歴史から将来を展望する」と題して講演。はじめに電気自動車について、「ガソリン自動車における『エンジン』『燃料タンク』『給油』という概念を、『モーター』『バッテリー』『充電』に置き換えたのが電気自動車、と考えるのは間違っている。電気自動車とは、最初からモーターとバッテリーありきで車体を設計したもの」と強調し、「プラモデルメーカーのタミヤが販売する『ミニ四駆』こそがその定義に当てはまる」と語り、発想の転換を促しました。その後、1827年にハンガリーのイエドリック・アニョスが世界で初めて開発に成功したとされる電気自動車の歴史を紹介。モーターとバッテリーの改良により、欧米を中心に電気自動車の速度や航続距離も向上していったことや、日本には1900年に初めて紹介され、国内のさまざまメーカーによって試作、開発が繰り返されたものの、国策によってガソリン車の開発にシフトしたため、衰退していった歴史を説明しました。
近年、環境意識の高まりなどによってあらためて注目されるようになったことから、今後は「センサーやAI、通信技術を用いた交通状況の認知と判断、ヒューマンインターフェースや無接触給電など、電気電子工学科の扱う研究分野、すべてを総動員する必要があります。未来に向けた技術革新が進み、夢は無限に広がるが、自動車はあくまで人を目的地へと運ぶ道具。どんなにハイテクが施されても、肝心のエアコンは機能するのか、といった初歩的な部分も見落としてはならない」と語りました。
質疑応答で電気自動車をより安価にし、普及させる方法について問われた森本教授は、「白熱電球はLEDに、蓄音機はCDプレーヤーに、映写フィルムはデジタルビデオに、エジソンの発明品は、今やすべて原理の違うものに置き換わって進歩している。しかし、電池だけはエジソンの時代と同じ原理。バッテリーの技術革新にこそ電気自動車普及の鍵が秘められていると考えています。ビンの中にプラズマを閉じ込めるような、画期的な発明が起きる日が来ることを期待している」と話しました。