マイクロ・ナノ研究開発センターのショオン・ゼン(Sheng Zhang)研究員と砂見雄太講師(工学部機械工学科)、橋本巨教授(同)がこのほど、トンボの翅(はね)の上部にある結節(nodus)が飛行能力に大きな影響を持っていることを発見。その成果をまとめた論文「Deformation Behavior of dragonfly-inspire nodus structured wing in gliding flight through experimental visualization approach」がオンラインの科学雑誌『Scientific Reports』に4月10日付で掲載されました。
他の動物や昆虫にはない高い飛行能力を持つトンボは近年、次世代型の飛翔体開発などを目的に世界各国で研究が進んでいます。砂見講師や落合成行教授、橋本教授らの研究室では、その飛行能力を支える部位が結節であることを2年ほど前に発見しています。現在、結節についてはその構造の解明を目指す研究が各国で行われていますが、その機能は解明されていませんでした。今回の研究では、本学のイメージング研究センターに導入されている走査型電子顕微鏡(SEM)を使って得たデータをもとに、3Dプリンターで結節を持つ翅を再現。結節のないものと、動きを制限した結節を持つものとともに風洞実験を行い、高速度カメラを使ってその挙動を撮影することに成功し、トンボが翅を自在に動かす上で結節が極めて大きな影響を持っていることを明らかにしました。
砂見講師は、「動物の持つさまざまな特徴や性質を商品開発などに生かすバイオミメティクスの分野は近年盛んに研究が進んでいますが、東海大学は橋本教授のもと日本でも最も古くからトンボなどに着目してこの分野の研究を手掛けています。現在無人の小型飛翔体(MAV)としてはドローンのように回転式のプロペラを使ったものが広く用いられていますが、常にローターを回しておく必要があるなどエネルギー効率が悪い面があります。一方トンボは、常に羽ばたきと滑空をうまく組み合わせながら、急加速・急発進も可能でかつエネルギー効率の高い飛び方をしており、これを人工的に模倣したMAVを実用化できればさまざまな領域で活用できると期待しています。そのためには、各部の機能を解明することが重要で、今回の論文で結節の機能を明らかにできたことは重要な一歩だと考えています。現在は、マイクロ・ピラー(micro pillar)という翅上の小さな突起の機能解明も進めており、こうした研究を積み重ねてトンボを模した小型飛翔体の実現を目指したいと考えています」と話しています。