工学部生命化学科4年次生の刀さくらさん(指導教員=生命化学科・水谷隆太教授)が9月25日に、第91回日本生化学会大会で若手優秀発表賞を受賞しました。この賞は、大学在学中か学位取得から2年以内の若手研究者による発表の中で特に優れたものに贈られます。
刀さんは、「統合失調症における神経細胞の構造変化」をテーマに発表しました。統合失調症は、幻覚や情緒障害、認知障害などをともなう精神疾患ですが、現在のところそのメカニズムは明確になっていません。今回の研究では、病気の罹患者とそうでない人の神経組織の違いに着目。兵庫県にある大型放射光施設SPring-8とアメリカアルゴンヌ国立研究所Advanced Photon Souceの協力を得て、それぞれの大脳皮質をX線ナノトモグラフィ法で解析し、取得したデータをもとに神経細胞の3次元構造モデルを作成して比較しました。その結果、神経細胞の先端にある神経突起が、罹患者だけ大きく蛇行してやせ細っているなど、構造に違いがあることを明らかにしました。「今回初めての学会参加で受賞することができ、ただただ驚きました。この研究は、研究室の皆で取り組んだ成果で、その結果が認められたと思います。水谷先生の研究室では、学内の実験室だけでなく、学外で実験する機会も多く、貴重な体験ができるのが魅力だと感じています。卒業後は医療系の企業に進み、現在取り組んでいる研究からは離れることになりますが、社会人になってからもこのテーマへの興味を捨てず個人的に学んでいけたらと考えています」と語りました。
また水谷教授は、「これまで人類の歴史では、精神と物質は別物だという考え方が主流でした。しかし今回、罹患者とそうでない人の神経構造に違いがあることが分かったことで、精神と物質に一定の関係がある可能性があることが見えてきました。今後もさらに症例を重ね、この点をより深く追求していきたい」と話しています。