動力機械工学科・山本准教授が日本機械学会賞(論文)を受賞しました

工学部動力機械工学科の山本建准教授がこのほど、日本機械学会賞(論文)を受賞しました。この賞は、過去3年間に発行された『日本機械学会学術誌』の掲載論文の中から、独創性や学問的または技術的な発展性、機械工学または広く産業社会への貢献度において高く評価された論文に贈られるものです。山本准教授は、日産自動車株式会社の山藤勝彦氏、電気通信大学の澤田賢治准教授との共同研究の成果である「電磁比例弁内のスプールに作用するクーロン摩擦力に起因した不安定振動の解析と安定化させるための設計法」(機械学会論文集 83巻852号掲載)で受賞しました。なお、同論文は昨年6月にも油空圧機器技術振興財団の論文顕彰を受賞しています。

今回受賞した研究は、自動車や建設機械の動力部に広く使われている油圧システムが、制御装置内部摩擦によって機械が振動してしまうメカニズムを解明しました。近年自動車業界などでは、低コスト化や高効率化に向けた研究・開発が急ピッチで進められていますが、油圧システムの動力部分で振動が発生するメカニズムは明らかになっておらず、制御するには試作品を使ってトライ・アンド・エラーを繰り返すしか方法がありませんでした。今回の論文は、そのメカニズムを理論的に解明。計算式を使って摩擦力を高精度で予測し、振動を発生させない設計につなげる手法を提案したものです。山本准教授は、研究全体のマネジメント役として本研究に参画しました。

山本准教授はこのほかにも、複数のローラーを組み合わせた電気自動車用の減速機などを研究。この研究では、ローラー間で生じる摩擦を利用した減速機を使って、高速回転するモーターの動力を、静かでかつスムーズに変速できるようにするシステムの開発を手掛けています。なおこの研究は、一昨年から、経済産業省や自動車メーカーが共同で設立している自動車用内燃機関共同研究組合の採択を受けています。

山本准教授は、「油圧システムはさまざまな機械の動力部分に使われています。そのため、今回振動のメカニズムを理論的に解明できたことで、さまざまなサイズの油圧システムで振動が発生する限界値を計算できるようになりました。自動車は高度な技術が組み合わさっており、まだ未解明の部分が多い一方、電気自動車など新しい形のモビリティに変化していかなければならない分野でもあります。今後も『摩擦を応用してモノを動かす研究』でこの分野に貢献していきたい」と話しています。

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