工学部建築学科を2002年に卒業した非常勤講師の山下貴成さんがこのほど、山梨県河口湖町の「河口湖とらのこ保育園」で、日本建築学会作品選集新人賞を受賞しました。同賞は、建築的に高い水準を有する作品を紹介する日本建築学会の「建築雑誌増刊作品選集」に掲載された作品の中から、40歳未満の筆頭設計者に対して贈られるものです。山下さんは同作品で、各国の若手建築家が初めて手掛けた作品の中から特に優秀なものが選ばれる「Bauwelt Award 2019:First Works」も受賞しています。
「河口湖とらのこ保育園」は、富士山を見晴らす河口湖町で、三方を高齢者施設に囲まれた環境に建てられています。屋根には大きな曲線を持つ「LVL湾曲垂木」を構造用合板で挟んだサンドウィッチ構造を取り入れて軽やかさを演出しているほか、壁材にも木材がふんだんに使われており、子どもたちの思い出に残るアクセントとして絵本作家のミロコマチコさんの絵を壁の一部に配しています。また園内は、子どもたちが外遊びを楽しめるよう大きなひさしに覆われた広場の周りに、保育室やランチルーム、ラウンジなどを設置。「大きな木の下に皆が集う空間」というコンセプトのもと、保育室とランチルームは仕切りのない大きな空間としつつ、屋根の高さに変化を与えることで子どもたちがその時の気分に応じて過ごせるスペースも設ける工夫を取り入れています。またラウンジや広場は高齢者施設の利用者や職員らも出入りできるようになっており、地域の核をなす憩いの場としての役割も担っています。
山下さんは受賞を受けて、「私にとっては独立の契機になった作品であり、一生懸命やった成果を評価していただけたことはうれしい限りです。東海大の建築学科には私が在籍した当時、1学年に約200名の学生がおり、日々の課題では常に『他にはないアイデア』の提案を求められているようで、切磋琢磨する環境がありました。また、指導教員だった吉松秀樹教授はもちろん、外部の先生方も含めて活躍されている方の指導を受けられたことがよかったと感じています」と振り返りました。また、今後の活動については、「これまでもクライアントの要望を聞き、空間全体のストーリーを重視しながら、それに応えることを大切にしてきました。今後もその基本方針を大切にしながら、文化の違う海外の施設も手掛けたいと思っています。また人々の生活の根源とも言える住宅も手掛けたい」と話しています。