ガネシュ研究員が2つの国際会議で学会賞を受賞しました

マイクロ・ナノ研究開発センターのガネシュ・クマール・マニ研究員(工学部精密工学科・槌谷和義教授研究室)が、10月29日に東京都調布市の電気通信大学で開催された「IRAGO Conference 2019」で、ベストポスター賞にあたる「IRAGO-STEM Young Scientist Award」を受賞しました。IRAGO Conferenceは、国内外の研究機関や企業で活躍する研究者や学生が最新の研究動向に触れ、ネットワークをつくる機会として電気通信大学と豊橋工科大学、本学が共同で毎年開催しているものです。ガネシュ研究員は、11月14、15日に静岡県浜松市で開催された「International Symposium on Biomedical Engineering」でも「Young Researchers Award」を受賞しました。

ガネシュ研究員は、直径数十µm程度という極細の注射針の先端にセンサを取り付け、細胞を壊すことなく内部の状態を確認できるようにする新しい手法の開発を目指す研究に取り組んでいます。新型インフルエンザやエボラ出血熱などは死亡率が高いため、迅速に治療薬を開発できる手法の開発が求められていますが、創薬に時間がかかり、仮に薬ができても患者を助けられないケースが多いのが現状です。その要因の一つが、薬の候補となる物質の効果を調べる際の手法にあります。薬の効果を確かめるには、感染細胞に候補の物質を滴下して効果を調べる必要がありますが、複数の候補物質について調べるためには細胞を一定時間かけて大量に培養してから観察しなければならないと同時に、それでは細胞一つひとつの変化についてはわからないため、全体の傾向しか明らかにできないのが現状です。

ガネシュ研究員は、槌谷教授や株式会社ミヤハラ(山口県 周南市)とともにこの課題に挑み、槌谷教授の持つ微細な注射針の加工技術を応用し、細胞を生きたまま顕微鏡観察できるセンサを開発。マイクロ・ナノ研究開発センターで開発したナノシートでラッピングした後、センサを差し込んで顕微鏡観察することで、細胞を壊すことなく内部のpH値を確認できるようにしました。pH値は細胞の状態の変化を確かめる上で重要なパラメーターの一つであるため、この技術が完成すれば、複数の感染細胞と候補物質を用意すれば、細胞1個単位で大量の候補物質の効果を同時に確認できるようになり、より迅速な薬の開発にもつながります。

ガネシュ研究員は、「現在はpH値を測る段階ですが、さらにナノシートの開発を進めることで、電圧や温度などの変化もリアルタイムで計測できるようにしたいと考えています。また、注射針のサイズもさらに小さくすることで、さまざまな大きさの細胞の観察にも応用できるシステムをつくりたい」と話しています。槌谷教授は、「この研究は、本学イメージング研究センターの光学機器やマイクロ・ナノ研究開発センターの技術、パートナーである株式会社ミヤハラ、ガネシュ研究員のどれがかけても実現できないものです。今後もさらに研究を重ね、誰もが使える技術として実用化につなげたい」と語っています。

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