ソーラー無人飛行機プロジェクトの最終試験を実施しました

工学部航空宇宙学科の福田紘大准教授らが中心となって開発した世界最大級のソーラー無人飛行機の最終動作確認を、12月27日に静岡県富士市で実施しました。この飛行機は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト※」を受託し、スカパーJSAT株式会社と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、本学から組成された研究開発コンソーシアムが2017年度から共同で進めてきた研究プロジェクト「衛星通信を利用するドローンの運行管理システムの開発」(以下、本プロジェクト)の一環で開発したものです。本学からは福田准教授をリーダーに工学部電気電子工学科の木村英樹教授、航空宇宙学科の新井啓之研究員、崔元碩研究員、学生約10名が参画。製作したソーラー無人機は両翼16m、全長約6.6mで、国内最大級の機体となっています。

本プロジェクトでは、2016年度にサウジアラビア・キングアブドゥラアジズ大学と共同で開発したソーラー無人機「サンファルコン2」(翼幅7.2m)をベースに機体を設計。新井研究員らの指導のもと、学生たちが設計班と機体班、電気班に分かれて製作を進めてきました。開発の過程では、動作試験や飛行試験を重ね、機体の状態をモニタリングしたデータをもとに軽量化や安定性の向上を図ったほか、2019年8月と9月には北海道大樹町で共同研究機関が開発したさまざまな機器を組み込んだ試験も実施。事前に組み込んだプログラムに基づく自動航行や衛星通信を使った情報の収集などにも成功しました。その結果を踏まえて実施した27日の最終動作確認では、今後のさらなる改良に向けて駆動モーター回転時の電力消費量やソーラーパネルの発電量、機体各部などの動作確認を行いました。

本プロジェクトに参加した那須順敬さん(大学院工学研究科機械工学専攻1年次生)は、「私は学部では航空宇宙学科で学んできたのですが、一つの製品を作るためには機械だけでなく、電気や制御などさまざまな知識が必要となることを実感しました」と語りました。また千葉瑠実佳さん(工学部電気電子工学科4年次生)は、「大学の授業で学んだ電気電子工学の技術が実際にはどのように使われているのかについて実践的に学ぶ機会になりました。また、企業が進める研究開発で求められる技術精度の高さや進め方を学べたことも収穫でした」とコメント。吉田有希さん(工学研究科電気電子工学専攻1年)は、「このプロジェクトに参加したことで、自分の専門分野とは異なる新しい分野を学ぶことができました。また製作や飛行試験を経験したことで、人と人との協力がとても大切であると感じました」と語っています。

また、JR東日本からの国内留学生として学んでいる菅野雄太さん(工学部電気電子工学科4年次生)は、「このプロジェクトでは非常時の安全対策などが綿密に練られており、鉄道業界で働く私自身にとっても学ぶことが多くありました。また、日本初の大型ソーラー飛行機開発に携わることで大きなやりがいも感じることができましたし、公共交通機関や航空機が災害時に活躍するために何が必要なのかをあらためて考える貴重な機会にもなりました」と話していました。

福田准教授は、「NEDOをはじめ、このプロジェクトに参画したすべての人々の緊密な連携と協力があったからこそ機体が完成しました。本学では故・平岡克己教授が着想した2012年ごろからソーラー飛行機の研究開発を続けてきましたが、今回国内最大サイズの飛行機を実現できたことは、これまで培ってきた技術や知識の大きな集大成になったと考えています。ソーラー飛行機の開発は世界各国で盛んに進められていますが、日本国内ではまだほとんど手掛けられていないのが実情です。今後もこの分野のパイオニアとして、機体の改良と研究を重ねて技術開発に貢献していきたい」と話しています。また新井研究員は、「航空機は高速で飛行するのが一般的ですが、今回は大型の機体を低速で安定飛行させるという難しいミッションへの挑戦となりました。そのため、研究の視点からみても非常に貴重なデータを多く収集できたと感じています。今後はこれらのデータもとに研究成果を社会に還元しつつ、より高効率な機体の開発を手掛けていきたい」と語っています。

※この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の結果得られたものです。
※「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」は、物流やインフラ点検、災害対応などの分野で活躍できる無人飛行機やロボットの開発を促し、社会実装するためのシステム構築や飛行試験などに取り組むものです。本学が参画した研究では、ソーラー飛行機の開発を本学が担当。スカパーJSATが持つ衛星通信技術と、JAXAの遠隔地での情報モニタリング技術および自動制御技術、NICTの無線通信技術を組み合わせ、自動操縦で飛ぶ無人ソーラー飛行機を司令塔として複数台のドローンを制御するシステムを開発したほか、目視外を飛行するドローンから送られるさまざまな情報をソーラー飛行機で集約し、通信衛星を介して収集する世界初のシステムの開発を目指してきました。

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