土木工学科・鈴木准教授が大和市と「ゾーン30」の運用に関する共同研究を実施しました

工学部土木工学科の鈴木美緒准教授の研究室が今年度、神奈川県大和市と「ゾーン30」区域内の路面表示に関する共同研究プロジェクトを実施しました。ゾーン30は、幹線道路などに囲まれた住宅地区で歩行者などの安全を守るために設けられている交通安全対策の一つです。こうした地区では、交通渋滞を避ける抜け道として自動車に利用されることも多く、歩行者などの安全確保が大きな課題となっています。その効果的な対策として、事故の際の致死率が大きく下がる時速30km以下に制限速度を抑えるこの方法が全国導入で取られています。その標示方法としては、錯視を利用したりポールを立てたりするといった工夫がとられていますが、一部の利用者にルールが守られず、気がつかない場合も多いなど効果的な標識の開発が大きな課題となっていました。

研究室では今回、大和駅近くの深見台地区をフィールドに設定し鈴木講師と冨田築さん(同学科4年次生)が中心となって調査を実施。自動車や歩行者の交通量や平均速度、自動車運転者の視線移動のデータを取り、国内外で用いられている「ゾーン30」用標識の調査も行って標識の案を提案しました。1月下旬の施工後には、実地調査を行い効果も検証。指定区域の入り口に標識を入れるとともに、途中にも設定すると効果的であることや、一定度の長さで道路の左右に縁石があるように見える表示を路面に設置するとよいことなどを明らかにしました。

冨田さんは、「研究を始める前は、標識の意味などを深く考える機会がありませんでしたが、制限速度など安全を確保するためには重要であることをよく理解できました。『ゾーン30』はその効果の高さが知られている一方、一般の認識が低いルールの一つでもあり、今回その研究に携われたことを誇りに思っています。また市役所で道路行政にかかわっている方々や警察関係の方とも何度も協議しながら政策として実現する過程を経験できましたし、住民の方からも『頑張ってね』と声を掛けられるなど、行政のやりがいを感じる機会にもなりました。4月からは市役所に努める私にとって、この経験はとても大切な財産になると思います」と語りました。

鈴木講師は、「道路標識は、利用者が自然とルールを守るよう促すことが理想なのですが、国内では実証実験をする機会がほとんどないのが実情です。今回の大和市とのプロジェクトはその意味でとても貴重で、有効なデータも数多く収集することができました。今後は、道路利用者へのアンケート調査なども行い、より効果的な手法の提案につなげたい」と話しています。