工学部建築学科では11月6日に湘南キャンパス19号館で、「伊勢原団地リノベーション×地域活性化案」プロジェクトの表彰式を行いました。本学が今年1月に神奈川県住宅供給公社と締結した連携協定の一環で実施したもので、伊勢原団地の12号棟を学生寮とし、地域コミュニティスペースも充実させることで入居率の悪化や入居者の高齢化、コミュニティの衰退といった周辺地域を含めた課題を解決するアイデアを学生が提案するものです。9月25日にオンラインで行った最終発表会で3チームが発表し、工学部と健康学部の教員5名と公社の担当者5名が審査。表彰式では本学科長の渡部憲教授が最優秀賞、優秀賞、敢闘賞の表彰状と記念品を授与し、携わった教員が講評を述べました。
今回、リノベーション案を考えた伊勢原団地12号棟は地上4階建てで、各階に8部屋あり、2部屋に一つ外階段がついている2戸1住居で、リノベーションにあたっては壁を取り除くといった大規模修繕に必要な建築確認申請を伴わないことが条件として提示されていました。学生たちは3月ごろから準備をはじめましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて4月中の授業は休講となり、「5月に入って遠隔授業が始まってから2週間に1度、グループごとに考えた内容を聞いてアドバイスをしながら案を考えていきました」と学生の指導に当たった山﨑俊裕教授は振り返ります。当初予定していた現地説明会や他団地のリノベーション事例の見学なども中止となりましたが、学生たちは図面や、インターネットで調べた情報を参考に案をまとめました。
最優秀賞を受賞したAチームは、1階にウッドデッキや開閉テント、手作りのかまどや菜園を設けることで、本学が地域住民向けに開いているワークショップや出前授業などを実施できる空間を提案。居住空間は既存の4部屋を1ユニットとして学生8名分の個室を設けるとともに、土足で利用できるダイニングといった共有スペースを3部屋作り、そこに面しているベランダを通路として利用することで横のつながりも生み出しました。「入居することで成長できる」をテーマに掲げ、ゆくゆくは学生自身が運営まで担う案も考えました。優秀賞に選ばれたBチームは、部屋に備え付けの開閉式ベッドや天井部分の収納、壁に取り付ける折り畳み式のテーブルなどを提案し、狭い個室でも快適に過ごせる方法を考えたほか、建物の南側には学生が集える場として畑や屋根を備えた「ダンダンテラス」を、北側には地域住民と学生が集う場として広場「伊勢原ウンジ」を設け、学生たちはペアを組んで毎月、地域の課題を解決する企画を発表する取り組みも考えました。敢闘賞のCチームは、新型コロナの影響があり過ごす時間が増えたことで需要が高まっている観葉植物を学生がPublic Gardenで育てて販売して家賃の補助にしたり、団地の壁面を緑化したりする案を考えたほか、1階にはキッチンや工房、屋内外にイベントスペースを設けることで入居した学生が自由に活用できる案を提案しました。
今後は、学生たちの発表の中から実現可能な案を組み合わせて設計事務所による実施設計が行われ、2021年に着工、2022年春ごろに入居開始となる予定です。山崎教授は、「建物というハードの部分だけでなく、入居者や地域住民が交流できる企画などソフトの面まで考えることは、学生にとって貴重な経験になったと感じています。アフターコロナの時代には、孤独な学生を生まないためにこういった団地をリノベーションした寮の需要も高まるかもしれません。今回の取り組みが全国的なモデルケースになれば」と期待を語っています。