大学院工学研究科機械工学専攻1年次生の3名が9月5日から8日まで千葉大学西千葉キャンパスを拠点にオンラインで開催された日本機械学会2021年度年次大会の卒業研究コンテスト部門に出場。松本香南さん(指導教員=砂見雄太准教授・工学部機械工学科)と三上駿志さん(指導教員=落合成行教授)が最優秀賞を、関友彰さん(指導教員=甲斐義弘教授)が優秀賞を受賞しました。
松本さんの研究テーマは「ロールナノインプリント法を用いたナノシートへの連続微細加孔加工」です。ナノシートは膜厚100nm以下になると高柔軟性や高接着性などの特徴が現れることから、超微細な孔を空けて薬剤を注入することで動きが活発な細胞を抑え、変化の様子や薬剤の反応性の容易な観察が可能になります。しかし、一般的に用いられているプレス法では大量生産が望めないことから、今回の研究ではロールナノインプリント法を用いて微細加工を施す際の最適条件を検討しました。松本さんは、「大学に入学した当初は機械系にはあまり興味がなかったのですが、友人と一緒に授業を受けるうちに面白くなり、もともと関心のあった医療系と組み合わせて現在の研究に取り組むようになりました。この研究をさらに深めれば新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発などにも使える可能性があるので、卒業までしっかり取り組んでいきたい」と話しました。
三上さんは、大規模災害現場において迅速な安否確認や周辺状況の調査手段として注目されているMicro Air Vehicleの研究に取り組んでおり、「リード・ラグ運動による姿勢制御を導入したトンボ型MAVの開発」をテーマに設定。現在、広く普及している回天翼型MAVはエネルギー効率が低く、長時間にわたる活用には不向きという課題を抱えていることから、昆虫の中でも高いエネルギー効率を持つトンボを模したMAVに着目しました。先行研究が進んでいる羽を上下に動かすフラッピング運動、羽をひねるフェザリング運動に加え、羽を前後に動かすリード・ラグ運動も再現可能なトンボ型MAVを設計・製作。「トンボと同等サイズのMAVで3つの羽ばたき運動の再現に成功しましましたが、上昇量が十分ではなく、離陸後に下降してしまったので改良が必要だと感じています。災害現場だけでなく農業などにも活用できるよう、実用化に向けて研究に励みます」と今後に向けた意気込みを語っています。
関さんは「目だけで操作するコミュニケーションシステムの開発」が研究テーマ。筋委縮性側索硬化症(ALS)は体を動かすために必要な筋肉が徐々にやせて力がなくなっていく難病ですが、症状が進行してからも眼球を動かす筋肉は比較的保たれることから、視線を非接触で計測できる視線計測デバイスを用いたコミュニケーションシステムが開発されています。一般的なシステムは50音順に文字が並んでいるため、誤入力も多いことから、関さんはテキストボックスの周りに子音を配置し、視線で子音を選択すると母音のページに移る新しいシステムを開発。「目を動かす範囲を極力減らすことで眼球疲労を軽減し、実証実験を重ねる中で誤入力を防ぐために注視時間を調整するなど改良を続けています。特許も出願したので、実用化を目指して研究を続けたい」と話しています。