総合科学技術研究所が「レーザー応用技術に関するシンポジウム」を開催しました

総合科学技術研究所が2月28日に、湘南校舎で「レーザー応用技術に関するシンポジウム」を開催しました。本シンポジウムは、レーザーに関連した研究に取り組む研究者が研究内容や成果を共有し、さらなる発展や新たな連携につなげる機会として実施しているものです。

当日は、初めに山口滋教授(理学部)が「波長・空間制御に優れたレーザーの応用研究」と題して講演。1964年にノーベル物理学賞を受賞したアメリカの物理学者チャールズ・タウンズとロシアの物理学者アレクサンドル・プロホロフ、ニコライ・バソフの3名による量子エレクトロニクスの基礎研究から始まったレーザー技術の歴史を紹介するとともに、日本の光産業の現状を紹介。また、分子の指紋領域と呼ばれる中赤外波長域で、光の波長と伝搬可能なフォトニック結晶の開発について解説し、「これを利用した面型量子カスケードレーザーとその検出器の素子開発を進めています。今後は、株式会社東芝と国立研究開発法人物質・材料研究機構と協力して物質検知に取り掛かる予定です。これらの研究によって、高速かつ高感度な中赤外線域の検出や波長操作のスマート化が期待できます」と話しました。さらに、研究の背景や技術的課題について語り、「レーザー研究は医療やカーボンニュートラルなどさまざまな分野に応用できます。今後も検討を重ねていきたい」とまとめました。

続いて、本研究所の遊部雅生教授が登壇し、光通信の大容量化に向けた広帯域光パラメトリック増幅器の研究について講演。ネットワーク回線上の通信トラフィックが年々増大傾向にある現状と、混雑による影響を説明するとともに、2段構造や反射型マルチQPM素子を用いたコンパクト化した光パラメトリック増幅器による実験について紹介しました。さらに、同じく本研究所のクリニッチ・セルゲイ教授が「Room-Temperature Chemorestive Gas  Sensors Based on Laser-Generated Nanomaterials」をテーマに、レーザー照射時に表面の構成物質が放出される現象である「レーザーアブレーション」による液体中のナノ構造調整などの研究成果を報告。最後に、本研究所の橋田昌樹教授が「パルスレーザー照射によりシリコン表面に形成される微細構造のその場計測」と題して、レーザー誘起ナノ周期構造の格子間隔や微細ナノ周期構造などについて説明するとともに、高付加価値ものづくりのための次世代レーザー加工技術について解説しました。