医師・作家の南杏子客員教授による特別講義を行いました

健康学部健康マネジメント学科では昨年12月20日にオンラインで、本学医学部卒業生で医師・小説家の南杏子客員教授による講義「高齢者の権利と意思の尊重~終末期ケアの現場から~」を行いました。「高齢者と福祉」の授業の一環で、本学科の1、2年次生中心に85名が受講しました。

南客員教授は高齢者に看護、介護、医療を提供する青梅慶友病院に勤務している中で感じたことなどを中心に講義を展開。「高齢者の権利や意思は尊重しなければなりません。しかし、社会には、たとえば“片付けができなくなってごみ屋敷に住んでいる”など、最低限度の生活ができない人への保護責任があります。個人の権利侵害にならないよう慎重な配慮が必要であり、権利と意思を守るには本人や周囲の納得がキーワードになります」と語りました。続いて高齢者の死因について解説し、「人は必ず死を迎えます。その時にふさわしい環境を考えなくてはいけません」としたうえで、「亡くなる時期にエネルギーの摂取をしなくなるのは自然現象です。無理に経口摂取をさせると誤嚥のリスクが高まります。減塩や禁酒、禁煙、ダイエットなども、『終末期に意味があるのか?』という視点で考えるとおのずと答えが見えてきます。咎めるのではなく折り合いをつけ、うまく介護することが大切」と説明しました。最後に、「好きなように食べられる介護、尊厳が守られる看護、心地よさを優先する医療、一人ひとりが納得できる環境をつくることによって、本当の意味で高齢者の権利や意思が尊重できるのではないかと信じてこれからも仕事をしていきます」とまとめました。

その後は授業を担当する中野いずみ教授が同病院のケアや延命治療などについて質問し、二人で意見を交わした後、中野教授が親族を見送った自身の経験をもとに「終末期ケアと家族等のグリーフケア」について講義。家族や医療従事者らが、本人の人生の最終段階における医療やケアへの意思を前もって共有する「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」や、死別の悲しみを抱える遺族をサポートする「グリーフケア」についても解説しました。聴講した学生からは、「正解がない終末期医療だからこそ、関わる人それぞれの意見を尊重し、患者本人にとって最善な選択を探すことが必要だと感じました」「『納得』というキーワードが特に印象的で、医療従事者や家族が本人の意思を尊重しながら適切なケアを行う大切さを再認識しました。無理な延命治療や過剰な薬物投与がかえって苦しみを生む可能性にも共感しました」といった感想が聞かれました。