今年3月に教養学部芸術学科デザイン学課程※を卒業した作家の岡田希乃風さんがこのほど、「TOKYO MIDTOWN AWARD 2025」(主催=東京ミッドタウンマネジメント株式会社)のアートコンペで優秀賞を受賞しました。「TOKYO MIDTOWN AWARD」は、才能あるデザイナーやアーティストとの出会い、応援、コラボレーションを目指しデザインとアートの2部門で開催されるコンペティションで、次世代アーティストの登竜門として広く知られています。今年のアート部門には303点の応募があり、岡田さんはグランプリ、準グランプリに次ぐ優秀賞に選出。9月25日から11月9日まで、東京ミッドタウンで入賞作品が展示されました。


岡田さんの作品『nemui』は、等身大の編みぐるみがベッドに横たわり、若者が寝る前にスマートフォンを眺めて怠惰な時間を過ごしている様子を表現。ベッドシーツや布団は機械で編み、そのほかはすべて手編みで制作しています。作品について、「人間には見えない面を見たくなる好奇心があるため、あえて編みぐるみの背中を正面にし、表情やスマートフォンを触る手元が見えない配置にしています。東京ミッドタウンという近代的でおしゃれな建物の中で、一見人が寝ていると思うような作品に驚く人も多かったと思います。今回は通行人の方が自由に触れる展示にしたので、メンテナンスに来る度に編みぐるみがいろんなポーズになっているのが面白かったです(笑)」と話します。今回は自身初となるコンペへの応募で、初めて入賞した岡田さん。「事務局からの電話が来た瞬間は手が震え、支えてくれた家族と泣いて喜びました。大学の先生方も喜んでくださり、本当にうれしかったです」と語ります。


編み物の制作を始めたのは大学3年時。SNSで流行していた鎖編みで作るリボンの投稿がきっかけとなり、岡田さんの創作活動が始まりました。「大学入学時はプロダクトデザインに興味を持っていたのですが、“自分の好きな作品を好きなように作りたい”と思うようになりました」と話します。卒業制作では、ゼミの指導教員だった池村明生教授らのアドバイスを受け、『nemui』のベースとなった等身大の編みぐるみを手編みで制作。自身の一人暮らしの部屋をリアルに表現し、卒業研究展で好評を博しました。「作家として活動することには不安もありましたが、大学の謝恩会で池村先生が、『岡田さんは後々になって大きな結果を残す、大器晩成型だから大丈夫』と言ってくれた一言が心の支えとなり、頑張ることができました。現役の学生の皆さんには、アイデアの実現が難しそうだと思ったときや、進路に悩んだときなどは、まず先生方に相談することをお勧めします。今回の受賞を糧に、今後もさまざまな作品を生み出していきたい」と語っています。
岡田さんの作品はショップページ(2026年1月から順次販売予定)からご覧いただけます。
※2022年度から新規入学者の募集を停止、現在は芸術学科に統合しています。岡田さんの学年が本課程最後の卒業生になります。