人間環境研究会第3回公開講座「ヒマラヤが源流の3つの大河~黄河、長江、メコン~」を開催しました

教養学部人間環境学科自然環境課程では、5月17日に湘南キャンパスで人間環境研究会第3回公開講座「ヒマラヤが源流の3つの大河~黄河、長江、メコン~」を開催しました。大学院人間環境学研究科とNPO法人東海ネットの共催でFD(Faculty Development/授業改善)研修企画として3回連続で実施しているこの講座は、各分野で活躍している方々の話を聞くことで教員の授業の質の向上を図るとともに、学生の視野を広げることを目的としています。今回は、一般社団法人淡水生物研究所所長の森下郁子さんを講師に招き、学生や教職員、地域住民ら約120名が参加しました。

森下さんは自身が訪れた中国の写真を交えて、ヒマラヤ山脈を源流とする黄河、長江、メコン川の特徴を紹介。「黄河は水が少なく砂が多い、砂漠のような川です。この砂が乾いて空中に飛び、皆さんも耳にしたことがある”黄砂”になります。冬季は川が凍るため、生物は川底にある砂の中にもぐって身を寄せ合っています。そのため、お互いがケガをしないように、黄河の魚にはうろこがありません。一方長江は、黄河の20倍から30倍の水が流れていて、エツと呼ばれる平たい魚が生息しています。メコン川は中国、ラオス、ミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムを流れる国際河川ですが、約4300kmのうち2000kmあまりを有する中国がそこにダムをつくって大量の水を確保しているため、タイやベトナムなど米を食べる国では他の川から水を引いて稲作を行っています。水質があまりよくないため、黒っぽい魚が多く生息しています」と話しました。

それぞれの川の流れる地域の人々の暮らしなどを紹介した後、森下さんがこれまでに訪れたことがある各国の自然環境についても説明。「カンボジアに位置するトンレサップという湖は水位が十数メートル変動するので、沿岸の木がすべて水に浸かってしまうことがあります。長く水の中にあった木は腐ってしまいますが、そこから魚の栄養になる成分が出るので、次に増水したときには小魚がたくさん集まってきます。それを求めてナマズが来る、というように生き物の世界は成り立っています」と解説。さらにオーストラリアや南アフリカにヨーロッパの人々が多くのユーカリの木を植えたことで牧場に草が生えなくなってしまった例を挙げ、「オーストラリアではユーカリの木を切って針葉樹林に変え、再び牧場に草を生やすことに成功しました」と紹介。さらに、「砂漠に雨が降り、水溜りができると、そこに魚やエビ、ミジンコなどが現れることがあります。これは休眠卵が水によって孵化するからですが、そうして1度壊れてしまった環境を再生させることも可能なのです」と語りました。

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