高輪キャンパスで開催された照明に関する国際会議「Lux Pacifica」で高雄教授が実行委員長を務めました

高輪キャンパスで3月6日から8日まで、環太平洋地域12カ国の照明学会で構成される国際会議「Lux Pacifica」(ルクスパシフィカ)が開催され、情報理工学部情報科学科の高雄元晴教授が実行委員長を、工学部建築学科の岩田利枝教授が実行委員を務めました。同大会は、産業界および大学間の共同研究を推進するとともに、産業界で結びつきの強い加盟各国の照明環境や技術動向について把握する機会を提供するもの。また、参加各国における照明デザインと教育に貢献することを目的としています。1997年の名古屋大会から21年振りに日本での開催となりました。期間中は、国内外の専門家による特別発表をはじめ、高雄教授と岩田教授も口頭発表を実施。また、情報科学科、建築学科と工学部医用生体工学科の大学院生8名も日ごろの研究成果を英語で発表しました。

大会初日には、公益財団法人スズキ財団から高雄教授が代表者として支援を受けたシンポジウムも実施。「Circadian Lighting: an Overview from Biology, Architecture, and Industry(サーカディアン照明:生物学、建築学および産業からの概観)」をテーマに、岩田教授がファシリテーターを務め、高雄教授が「Current advancement in biological studies on circadian photoreception」と題した講演を行いました。高雄教授は、米国留学中の2000年に当時の指導教員とともに発見した内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)がサーカディアン照明技術※の開発につながっていった歴史的背景から、同細胞の光に対する反応性に関する最新の研究知見を紹介し、サーカディアン照明の最適化に関して提案。さらに、ipRGCに関する発生生物学的研究からNICU(新生児集中治療室)の照明環境に関する提言などを行いました。続いて福岡女子大学の福田裕美氏、九州大学の古賀靖子氏、パナソニックの野口公喜氏が講演。最後には登壇者全員に会場も交えて熱心な質疑応答も行われました。

高雄教授は、「夜になるとiPhone画面の青色光が弱くなる機能が最近付加されたことを知っている方も多いと思います。私たちは2000年にipRGCが青色光に対し最も感度が高いことを世界で初めて発見しました。その後、実際に『夜間に過剰に青色光を浴びるとサーカディアンリズムが遅い時間にずれてしまう』ことが、ヒトを対象とした多くの研究で確かめられています。そのため、Apple社はiPhoneの画面を夜間に長い時間見続けてもサーカディアンリズムに影響を与えにくくするために、青色光の割合を時間によって調節するようにしたのです。これも一種のサーカディアン照明と言えます。大学は主としてすぐには産業に結びつかない基礎研究に偏重していると言われますが、逆に地道な基礎研究がなければ新しい産業のイノベーションが起こらないのも事実です。このiPhoneのサーカディアン照明技術が良い事例となろうと思います」と語っています。

※サーカディアンリズムは脳が発振する約1日のリズムのことで、眼球中の網膜の中でipRGCが光を受容しその光情報を、視神経を通じて脳に伝えています。光によって網膜や脳に直接働きかけて、サーカディアンリズムを調整したり、影響を最小限に抑えたりする照明技術をサーカディアン照明技術といいます。

照明学会 (1)_341.jpg

照明学会 (2)_341.jpg

照明学会 (3)_341.jpg