金原名誉教授が執筆した『トラキアの考古学』が刊行されました

東海大学の金原保夫名誉教授(元・文学部歴史学科西洋史専攻教授)が執筆した『トラキアの考古学』(世界の考古学シリーズ26)が、9月10日に同成社から刊行されました。同書は、現在のブルガリアを中心とするバルカン半島東部で紀元前3000年代から紀元後6世紀ごろまで存在した古代民族トラキア人に焦点を当てた日本初の概説書です。

本学は、国内の大学に先駆けて国際交流活動を開始し、1969年からブルガリアとの交流を展開。学術交流の一環として学内の研究者からなる「東海大学トラキア調査団」を派遣し、84年から2012年までデャドヴォ遺跡で考古学的発掘調査を行ってきました。金原名誉教授は、72年から本学最初の交換留学生としてソフィア大学でブルガリア語とブルガリア史を学んだ後、本学の教員に採用され、同調査に参画。本学副学長を務めた尚樹啓太郎教授やエジプト学者鈴木八司教授の下で考古学専攻の教員らとともに、トラキア人の起源を探るべく発掘調査を行いました。

同書では、「トラキア調査団」の研究成果を取り入れつつ、新石器時代からローマ時代までの通史を概観したほか、「社会と経済」「軍事活動」「宗教」「文化」のテーマごとに解説。これまで日本語では断片的にしか学べなかったトラキア人の歴史や文化を幅広く学ぶことができ、マリエタ・アラバジエヴァ駐日ブルガリア大使からも「日本とブルガリアの相互理解を深めるうえでも重要な書籍である」との推薦の辞が寄せられました。

金原名誉教授は、「バルカン半島は、東西の両文明が入り混じる『文明の交差点』と呼ばれる歴史的に重要な地域です。西洋史では、ブルガリアなどは周縁と考えられがちですが、中世まではこの地域が非常に重要な役割を果たしており、トラキア人に目を向けることでヨーロッパやアジアの歴史をより深く理解できるようになるとも考えています。個人的には、東海大学の国際交流活動を通じてブルガリアに関係し、長く調査・研究に携わってきた成果をこうした形で発表でき、大変うれしく思います。この本が、日本とブルガリアの相互理解とさらなる交流発展に役立つことを願っています」と話しています。