文学部文明学科では7月1日に、「知のコスモス」講演会「縮小社会における地域社会再編の是非~中山間地域でのボランティアワークキャンプ実践から考える~」をオンラインで開催しました。今日、日本は財政再建や社会保障改革という大きな政治課題を抱えており、地方自治体は、国に先行してすでにこうした問題の解決を迫られています。本講演会では、中山間地域で行われているボランティアワークキャンプでのフィールドワークを行っている岩手県立大学社会福祉学部准教授の庄司千恵子氏に、縮小社会日本における地域社会の現状と今後についてお話しいただきました。当日は、学生や教員、一般参加者らが参加しました。
講演ではまず、庄司氏が自身の専門である農村社会学の立場から、福祉への見方・考え方などについて言及。「福祉は他者である弱者を支援するというだけの狭い概念ではなく、誰もが暮らしやすい街づくり・社会づくりに参加していくことであり、自分らしく生きられる社会づくりにつながるものです」と話しました。そのためにも、地域を知ることが重要であり、フィールドワークを通して「知らない、わからないと思うこと、気づきや調べることの重要性を知ってほしい」と語りました。その後、岩手県奥州市衣川区北股地区センターがボランティアセンターとなり、住民の生活支援ニーズとボランティアをつなぐボランティアワークキャンプについて、映像をもとに紹介。そこでは、雪かき作業に参加する岩手県立大学の学生が、雪深い地域の大変さを知る様子と、その作業を依頼した住民の喜ぶ様子がありました。また、地域住民たちがボランティアを頼まない理由や受け入れた理由などについて、細かく聞き取り調査を行った結果などを紹介しました。庄司氏は、個人が依頼することで心理的負債が生じること、そのため集団作業へのニーズが多いことなどをあげ、など、地域性からの理解の重要性を指摘し、「高齢者と若者とでは認識する地域コミュニティの範囲や広さにズレがあることなども踏まえ、将来のコミュニティを考えることが大切」と締めくくりました。
質疑応答では、学生から「フィールドワークを進めるうえで信頼を得るために心がけるべきことは?」「過疎が進む地域がボランティアを集める具体的な方法は?」などの質問があり、庄司氏は、「相手に心を許してもらえるような服装や態度、そして傾聴が重要。さまざまな場面でボランティアを募り、集落の中でも活動できるようなきっかけづくりも大切です」と話しました。参加した奥州市社会福祉協議会の方からは、「社会福祉について広い視野から誰もが対象者であるという意識づくりをすることの大切さについて、あらためて考えました」と感想が寄せられました。最後に、本講演を企画した李賢京准教授が、「フィールドワークのように足を運ばないとわからないことが多くあり、そうした現場で住民と行政とのコミュニティ感の違いなどに気付いて私たちが行動に移すことで、社会は変わっていきます。そのためには、日ごろから自分の周りに関心を持ち、当事者意識を持つことが大切です」と話しました。