医学部・大塚正人准教授らの研究成果がオンラインジャーナル『Genome Biology』に掲載されました

医学部医学科基礎医学系の大塚正人准教授と米国ネブラスカ大学、東京医科歯科大学の共同研究グループが、高効率で遺伝子改変マウスを作製する方法を開発。5月17日(イギリス時間)にオンラインジャーナル『Genome Biology』に掲載されました。

遺伝子を人為的に操作して作製される遺伝子改変マウスは、遺伝子の機能解析実験やヒト疾患のモデル動物として利用される、極めて重要なツールの一つです。その中でも特に使用頻度が高いのが、レポーター遺伝子や組換え酵素遺伝子などを挿入したノックインマウスと、特定の時期かつ特定の組織で特異的に遺伝子を破壊するコンディショナルノックアウトマウス(loxPと呼ばれるDNA配列が挿入されている)であり、遺伝子改変マウスの需要の約9割をしめています。これらを作製するためには、ゲノム中の標的とする場所に目的のDNA配列を挿入する必要があります。近年開発された「CRISPRゲノム編集法」を用いた場合、単純な遺伝子破壊は簡単にできますが、ゲノムの狙った位置に目的のDNAを挿入する技術に関してはいまだに効率が低いといった課題があり、新たな遺伝子挿入手法の確立が強く望まれていました。

本研究グループでは、二重らせん構造のままの「二本鎖DNA」に比べて、片方のみの「一本鎖DNA」を用いた場合の遺伝子挿入効率が高いことに着目。これまでに、「長鎖一本鎖DNA」の合成法を確立し、「CRISPRゲノム編集法」を用いて長さ400塩基程度の配列のDNAをゲノムに挿入する技術を開発してきました。今回は、この技術を約1000~1500塩基の挿入に発展させるとともに、CRISPRリボ核タンパク質を用いることで、従来と比べて10倍以上も遺伝子挿入効率を向上させることに成功し、ノックインマウス作製やコンディショナルノックアウトマウス作製に応用しました。この方法は、「Easi-CRISPR (Efficient additions with ssDNA inserts-CRISPR)法」と命名されました。

大塚准教授は、「本学とネブラスカ大学、東京医科歯科大学のいずれの研究施設でも簡単に目的のマウスが作製できたことから、『Easi-CRISPR法』は非常に再現性が高いと考えられます。論文掲載直後から、『Easi-CRISPR法』の詳細に関する質問や講演の依頼など、国内外のたくさんの研究者からのリクエストをいただきました。この手法が世界中で使用されること、また、マウス以外の生物種での遺伝子改変や遺伝子治療への応用などにも生かされることを願っています。今後も、低コスト、高効率で簡便に遺伝子改変マウスを作製する技術を開発し、医学・生物学の発展に貢献したい」と話しています。

【参考文献】
Quadros RM, Miura H, et al. Easi-CRISPR: a robust method for one-step generation of mice carrying conditional and insertion alleles using long ssDNA donors and CRISPR ribonucleoproteins. Genome Biol. 2017 May 17;18(1):92.
doi:10.1186/s13059-017-1220-4.

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