医学部の坂部貢学部長(基礎医学系生体構造機能学教授)が11月4日に小田急線「東海大学前駅」南口のTOKAIクロスクエアで、「人工化学物質の生物への影響に関する地域啓発② ―環境化学物質と子どもの健康―」をテーマに講演しました。本学が文部科学省の平成25年度「地(知)の拠点整備事業」の採択を受けて取り組んでいる、To-Collaboプログラムの大学推進プロジェクト「エコ・コンシャス計画 環境保全事業」によるシンポジウムの一環として実施したものです。当日は、近隣住民や本学の教職員ら多数が聴講しました。
講演に先立ち、座長を務めた医学部の寺山隼人准教授(基礎医学系生体構造機能学)が本講演会の趣旨を説明し、講師を紹介しました。続いて登壇した坂部教授は、内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)が、がんやアレルギー性疾患、生殖器の異常、認知症の発症リスクを高め、子どもの異常行動や学習障害を引き起こすといった疫学的調査結果について解説。農薬や工場排水、生活排水に含まれる有機塩素系化合物によって海洋生物や鳥類に奇形が発生した事例を紹介しました。また、生態系の頂点にいるヒトの体内には他の生物の数千倍の濃度に及ぶ化学物質が取り込まれ、胎児には母体から直に化学物質が引き継がれるという調査結果を示し、胎児期における予防の重要性を指摘。さらに、室内の防虫・防湿剤やおもちゃに含まれる揮発性有機化合物が子どもに与える影響についても説明しました。最後に、胎児期から13歳までの子どもの成長・発達と環境要因との関係を調べる、環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」について紹介し、「健康に害を及ぼす可能性のある化学物質の科学的エビデンスを検証するため、他学部の研究者とも連携協力して引き続き調査研究を進めていきたい」と語りました。講演後には会場から多くの質問が寄せられました。
参加者からは、「子どもの健康のためには、妊娠する前から食事や生活環境に留意することが大切だとあらためて認識しました」「こまめに部屋の換気をするなど、できるところから環境化学物質の影響を受けにくくする工夫をしたい」といった感想が聞かれました。