医学部付属病院が「認知症と運転」をテーマに認知症研修会を開催しました

医学部付属病院では2月4日に伊勢原キャンパスで、「令和元年度認知症研修会」を開催しました。認知症への理解を深めてもらうため、本病院の認知症疾患医療センターが中心となって毎年実施しているものです。今回は「認知症と運転」をテーマに、医師や自動車メーカーの研究者、警察職員が講演。学生や教職員をはじめ近隣の住民や医療従事者、地方公共団体の福祉担当者ら約170名が参加しました。

本センターの瀧澤俊也センター長(医学部副学部長・内科学系神経内科学)による開会の挨拶に続き、慶應義塾大学医学部教授の三村將氏(精神・神経科学)が「認知症と自動車運転」をテーマに基調講演。自動車運転に関する法制度や向精神薬の運転への影響、運転能力の新たな評価方法などについて解説し、「運転能力は、病名ではなく個々の状態で評価・判断することが大切。適切なリハビリテーションや教育で運転寿命を延ばす取り組みが求められます」と語りました。

一般講演では3名が登壇。日産自動車株式会社の清水俊行氏は、一人ひとりの特性に合わせた車や脳の情報をフィードバックできる車など、より安心・安全で楽しく運転できる自動車の研究開発について説明しました。伊勢原警察署交通課の櫻井真氏は、高齢者が関与した自動車事故件数の推移を示し、高齢者が車を運転する際の留意点について解説。平塚市医師会理事で湘南いなほクリニック院長の内門大丈氏は、同クリニックの「もの忘れ外来」で実施した認知症の人の自転車運転に関するアンケート調査結果を紹介し、「自転車についても、認知機能障害の程度をみながら早めに運転をやめることを推奨したい」と語りました。終了後には活発な質疑応答を展開。最後に、坂部貢医学部長(副学長・医系担当)が講演者と来場者への謝辞を述べ、「研修での学びを家庭や地域で生かしてください」と結びました。

参加者からは、「80歳近い父親が車を運転していますが、高齢者による自動車事故がニュースになるたびに不安になっていました。法制度や運転技能の評価方法、相談窓口などがわかってよかった。家族できちんと話し合おうと思います」「“心身の機能が低下していることを自覚して”という言葉が印象に残りました。少しでも長く安全に運転できるよう、脳や体のトレーニングを始めたい」といった感想が聞かれました。

なお、当日のプログラムは以下のとおりです。
◇開会の挨拶
瀧澤俊也(東海大学医学部付属病院認知症疾患医療センター長
医学部副学部長 医学部医学科内科学系神経内科学教授)
◇基調講演
「認知症と自動車運転」
三村 將氏(慶應義塾大学医学部精神・神経科学教授)
<司会:山本賢司(東海大学医学部医学科専門診療学系精神科学教授>
◇一般講演
<司会:今関良子(東海大学医学部医学科内科学系神経内科学講師
伊藤由美(東海大学医学部付属病院看護部 認知症認定看護師>
1「脳科学を取り入れた自動車研究の取組み」
清水俊行氏(日産自動車株式会社 総合研究所研究企画部)
2「高齢者を取り巻く交通情勢と免許制度」
櫻井 真氏(伊勢原警察署交通課交通総務係)
3「認知症と自転車運転~当院もの忘れ外来での実態調査~」
内門大丈氏(平塚市医師会理事 湘南いなほクリニック院長)
◇質疑応答
◇閉会の挨拶
坂部 貢(東海大学副学長(医系担当) 医学部長
医学部医学科基礎医学系生体構造機能学教授)

認知症研修会1.jpg_525.jpg

認知症研修会2.jpg_525.jpg

認知症研修会3.jpg_525.jpg

認知症研修会4.jpg_525.jpg

認知症研修会5.jpg_525.jpg