東海大学総合医学研究所の岡晃講師と順天堂大学大学院医学研究科皮膚科学・アレルギー学の池田志斈教授らの研究グループが、世界で初めて円形脱毛症の原因遺伝子の1つとして「CCHCR1」を同定。「MHC領域の円形脱毛症の疾患感受性遺伝子バリアントは毛髪の角化に関する遺伝子発現に影響をあたえ、また脱毛に関与する」と題した論文が、6月21日に医学雑誌『EBioMedicine』オンライン版に掲載されました。
円形脱毛症の罹患率は1~2%といわれています。多くは単発の脱毛巣ですが、頭部全体や全身の脱毛に至るケースもあり、外見の変化により患者のQOLが著しく低下すると懸念されています。免疫システムの異常や遺伝子の変異など多くの要因が関与していると考えられていますが、発症の原因やメカニズムは解明されていません。岡講師は、遺伝情報と疾患の発現の関係を統計学的に解析する「遺伝統計学」の手法を用いて円形脱毛症の原因遺伝子を探索。ヒトの第6染色体の一部であるMHC領域(主要組織適合遺伝子複合体)に存在するCCHCR1遺伝子に、原因となる変異があることを発見しました。そこで、「CRISPER/Cas9」という技術を使って同じ遺伝子の変異を持つマウス(遺伝子改変マウス)を作製したところ、円形脱毛症患者ときわめて類似した脱毛症状が発現。さらに、CCHCR1に変異がある患者の毛幹(地肌から出ている毛の部分)の状態や遺伝子の発現パターンの解析結果が、遺伝子改変マウスとよく似ていることを明らかにしました。
岡講師は、「遺伝子改変マウスでもヒトの毛幹の状態や遺伝子の解析でも、円形脱毛症にCCHCR1遺伝子が関与していることを実証できました。現在は、発症機序の分子レベルでの解明に取り組んでいます。本研究は2019年度の総合研究機構プロジェクト研究に採択され、理学部化学科の岩岡道夫教授や工学部応用化学科の毛塚智子准教授らとの共同研究も進めています。創薬はもちろん、遺伝子情報を基盤とする新たな診断、予防、治療法の開発に向けて研究を加速させたい」と話しています。
※『EBioMedicine』に掲載された論文は以下のURLからご覧いただけます。
https://www.thelancet.com/journals/ebiom/article/PIIS2352-3964(20)30185-7/fulltext