医学部医学科専門診療学系画像診断学領域の長谷部光泉教授(医学部付属八王子病院血管内治療センター長)らがこのほど、全米医学アカデミー(NAM)主催の健康長寿グローバルコンペティションで「2024カタリスト・アワード」を受賞。9月30日、10月1日にオンラインで開催された同団体の「イノベーターサミット」で発表されました。この賞は、NAMが展開する「Healthy Longevity Global Grand Challenge」の一環として、高齢化社会の課題解決や健康長寿の実現に役立つシーズとなり得る革新的なアイデアを支援するために設けられています。長谷部教授らは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の推薦を受け、「膝下微小閉塞性動脈硬化性病変用ハイブリッド・ナノコーティング・ニチノール薬剤溶出ステントの開発」で受賞。今後は、翌年のイノベーターサミットへの参加をはじめ、世界中の政策立案者や研究者、投資家など、グローバルな学際的ネットワークとつながる機会が与えられます。
閉塞性動脈硬化症は、末梢動脈が狭まって血液の流れが悪くなる疾患です。膝から下にある動脈の閉塞は悪化すると下肢の切断に至る場合もあり、QOLや生存率を著しく低下させます。治療法として、ステント(血管を内側から広げる金属製の網目状の筒)の留置による血流再開術がありますが、膝下動脈は直径が4ミリ以下で変形や屈曲が強く、ステントの周囲に血栓ができたり血管平滑筋細胞の過増殖が起こったりして再狭窄しやすいことが課題となっていました。
医学と工学の2つの博士号を取得している長谷部教授は医工連携の研究チームを編成し、柔軟性や耐久性、生体適合性があって血栓ができにくく、長期間の留置が可能なステントの研究に従事。20年以上の年月をかけ、フッ素添加ダイヤモンドライクカーボンでコーティングしたニッケルチタン性の薬剤溶出ステントと、そのデリバリーシステムを開発しました。早期の実用化を目指し、2022年に研究チームのメンバーとスタートアップ「Global Vascular株式会社」を設立。投資家をはじめ、AMEDや東京都の先端医療機器アクセラレーションプロジェクトなどから合計18億円にのぼる支援を受けて研究を進めています。
長谷部教授は、「現在、アメリカ食品医薬品局と日本の独立行政法人医薬品医療機器総合機構における安全性や有効性を審査するのための申請が最終段階に入っています。来年4月からは、八王子病院を中心とする国内4施設で治験を始める予定となっており、“東海大学発”の研究成果を世界に向けて提供するための最後のフェーズに入りました。今回の受賞は、実用化への取り組みを後押ししてくれるものと受け止めています。研究開発の意義を理解してくれたNAMと、AMEDをはじめとする支援団体、協力してくれた多くの方々に感謝するとともに、開発したステントを一刻も早く患者さんに届けるために努力を続けます」と話しています。
※健康長寿グローバルコンペティションの詳細は下記URLからご覧いただけます。
https://healthylongevitychallenge.org/about-us/
※受賞研究の概要は下記URLからご覧いただけます。
https://healthylongevitychallenge.org/winners/development-of-a-hybrid-nano-coated-nitinol-drug-eluting-stent-hybrid-des-for-small-atherosclerotic-lesions-in-below-the-knee-btk/