医学部医学科の河野教授らによる「あざ」のレーザー治療に関する研究成果が国際学術誌『JAAD Reviews』に掲載されました

医学部医学科外科学系形成外科学領域の河野太郎教授らの研究グループがこのほど、「あざ」の治療に対するレーザーの照射条件を評価する新たな分析法を開発。その成果をまとめた論文が6月20日に、アメリカ皮膚学会が刊行する国際学術誌『JAAD Reviews』オンライン版に掲載されました。

あざはメラニン色素が皮膚の内部に沈着して発症します。治療には一般的にレーザーが用いられていますが、メラニンのみを壊し、その周囲に影響を与えることのない照射条件については精密な分析が行われていませんでした。河野教授と大阪公立大学大学院医学研究科の下条裕ポスドク研究員、小澤俊幸特任教授らの研究グループでは、効果的で安全なレーザー照射条件を評価するための指標をインシリコ(コンピューター上)で作成するとともに、これまで報告されている治療情報の中から理論的に指標と合致するデータのみを対象とする「インシリコ支援メタ分析」を開発。さらに、この分析法を青あざの一種である「太田母斑」に適用した結果、10億分の1秒のパルスを発する「ナノ秒レーザー」に比して、1兆分の1秒のパルスを発する「ピコ秒レーザー」が、高い有効性を示すことを明らかにしました。「玉石混交の治療報告の中から不適切なデータを除くことで、治療の妥当性をより正確に評価できる分析法を確立しました。患者さんの状態に合わせた効果的で安全性の高い照射条件をあらかじめ設定できるようになった意義は大きい」と河野教授は説明します。

レーザー照射装置などの医療機器を用いたあざや傷の治療を専門とする河野教授は、国内外の医療機関や理工系学部、企業の研究者らと連携して治療法の研究開発に従事する傍ら、日本レーザー医学会のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)委員会委員長や一般社団法人日本美容外科学会・美容医療ガイドライン委員会の委員長を務めるなど、適正な医療を提供するための活動にも取り組んでいます。「有効性・安全性が高いことはもちろん、医療経済的に問題がなく、世界標準として長期間患者さんに貢献できる治療法の開発が目標です。今回の成果を生かしてレーザーによる治療法をブラッシュアップするとともに、患者さんと国と医師の“三方良し”を目指して研究を続けます」と話しています。

※『JAAD Reviews』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://www.jaadreviews.org/article/S2950-1989(25)00066-2/fulltext