医学部医学科の磯崎講師が過剰な飲酒と心臓性突然死リスクとの関連を明らかにしました

コペンハーゲン大学法医学研究所のメンバーらと。上段左から2人目が磯崎講師

医学部医学科基盤診療学系法医学領域の磯崎翔太郎講師とデンマーク王立病院循環器センター、コペンハーゲン大学法医学研究所の研究者らがこのほど、法医学の知見と大規模データを用いて飲酒量と心臓性突然死の関連を解析。過剰な飲酒が心臓性突然死のリスクを高めることなどを明らかにしました。その成果をまとめた論文が8月20日に、ヨーロッパ心臓病学会関連誌『European Journal of Preventive Cardiology』オンライン版に掲載されました。

心臓性突然死は、心臓や血管の病気で死亡する人の約50%を占めています。その多くは前触れなく起こるため、発症リスクの低減につながる改善可能な生活習慣を明らかにすることが公衆衛生上の課題となっています。飲酒は高血圧や心筋症、不整脈などに関与すると言われており、長期・大量に飲酒を続けてきた人に生じる突然死は、法医学領域において「大酒家突然死症候群」として議論されています。しかし、飲酒量と心臓性突然死の関連については一貫した知見が得られていませんでした。

研究グループは、コペンハーゲン心臓研究に参加した10,100人を約30年間にわたり追跡調査したデータを解析。死体検案書や解剖記録を法医学的視点から厳密に検証し、897件の心臓性突然死を同定しました。その結果、飲酒単位※が21単位を超える過剰な飲酒は中等量の飲酒(8~14単位)と比較して、心臓性突然死の発症リスクを約1.4倍に高めることを確認。さらに、飲酒をしない人々と中等量を飲む人々との間には有意なリスクの差が認めらないことも明らかにしました。

磯崎講師は、「非常に多い飲酒が心臓性突然死のリスク上昇と関連することが明らかになりました。一方、少量から中等量の飲酒に明確なリスクの差が認められないことから、一部で示されていた“少量の飲酒には心血管保護効果がある”という予防効果に対する裏付けは、心臓性突然死においては確認できませんでした。これらの結果から、飲酒による利益を期待するよりも過剰な飲酒を避けることが、健康のために重要である可能性が示唆されました」と磯崎講師は説明します。

昨年度から、コペンハーゲン大学法医学研究所法医遺伝学部門、デンマーク王立病院循環器センター心臓性突然死研究班の客員研究員として現地に滞在している磯崎講師は、東海大学ヨーロッパ学術センターのサポートを受けてさまざまな国際共同研究に取り組んでいます。「私はこれまで、法医学における死因究明を個々の死亡の説明にとどめず、生命・健康・社会を理解し、将来の死亡予防につなげることを目指してきました。今後も、法医学、臨床医学、疫学など異なる分野の知見を結びつけ、死に至る仕組みの解明から集団のリスク評価、さらには予防に至るまでを一貫して捉える研究を進め、得られた知見を社会に還元していきたいと考えています」と話しています。

※飲酒単位
純アルコール量に換算した飲酒量の指標。本研究では1単位=純アルコール換算で12g(缶ビール〔350ml、アルコール度数5%〕約1缶に相当)として評価した。週21単位は、缶ビール21缶(純アルコール約252g)に相当する。

※『European Journal of Preventive Cardiology』に掲載された論文は下記URLからご覧いただけます。
https://doi.org/10.1093/eurjpc/zwag436