医学部付属病院でフォトンカウンティング検出器搭載CT「NAEOTOM Alpha」日本初号機の稼働が始まりました

医学部付属病院でこのほど、シーメンスヘルスケア株式会社のフォトンカウンティング検出器搭載CT「NAEOTOM Alpha(ネオトムアルファ)」日本初号機の稼働が始まりました。ネオトムアルファは、光子(フォトン)を個別に数えるフォトンカウンティング技術により、X線量を低く抑えながら、きわめて高精細な画像を撮影できる次世代CTです。本病院では、早期診断・治療や医療安全などの観点から他に先駆けて導入を決定し、3月29日に東京都内で開かれた同社主催の製品説明会で発表。6月5日に装置を搬入して組み立てと調整を行い、14日に神奈川県の立ち入り検査を受けて使用が許可され、翌15日から検査・診断を開始しました。同機の導入はアジア初でもあり、大きな期待と注目が集まっています。

CTなどの画像診断を専門とする本病院画像診断科の橋本順診療科長(医学部医学科教授)は、「少ないX線量のため患者さんの被ばく量を軽減でき、しかも、短時間に正確で詳細な情報が得られるのがネオトムアルファの特長です。耳や骨の内部といった複雑で微細な構造がクリアに表示され、従来のCTではとぎれとぎれにしか映らなかった構造が、細い鉛筆で強く引いた線のようにはっきりと見えます」と説明します。

「大きなメリットは、脂肪、カルシウムや金属といった物質の識別ができること。たとえばこれまでのCTでは、血管の石灰化(動脈の壁にカルシウムが沈着した状態)が起きていても、血管内の造影剤と同様に白く映ってしまうため判別が難しかったのですが、ネオトムアルファはカルシウムを正確に識別し、さらに石灰化している部分のみを画像から削除できるので、血管狭窄の状態をより正しく確認できます。血液の流れの評価や組織の成分分析も可能です。またこのCTの登場が、現在使用されているヨードとは全く別の物質を用いた新しい造影剤開発の端緒となる可能性があり、新たな診断法や創薬の研究開発などへの利用も期待されます。診療科別の説明会を順次実施して各専門分野における臨床や研究への活用方法を見いだしていくとともに、画像診断科としても、機器の高い性能を生かし、現在用いているヨード造影剤の減量ができないかといった検討などを予定しています。そうして得た新たな知見や研究成果を国内外の学会などで広く発信していくのも、私たちの大きな使命と考えています」

ネオトムアルファの導入にあたり、CTを操作する診療放射線技師らのチーム体制の強化を図ってきた診療技術部放射線技術科の堀江朋彦科長は、「通常は5機のCTを運用していますが、機器の入れ替えのため、5月22日から約1カ月間は4機で対応しなければなりませんでした。さらに、技師に対する新CTの操作訓練も必要なため、これまでの業務運営やスタッフの体制を根本から見直しました。チームの協力もあって、4機のCTを効率的に運用して普段どおりの件数をこなすとともに、患者さんや医師らに同じ質とサービスを提供できました」と振り返ります。「どんなに性能の優れた機器を導入しても、使いこなせなければ意味がありません。ネオトムアルファの性能を100%出し切るだけでなく、それ以上の能力を引き出すのが私たちの仕事であり、その責任を果たしたい」と意欲を語ります。

CT検査部門の責任者を務める放射線技術科の吉田亮一係長は、「診療放射線技師全員が、一刻も早く新CTの操作に精通することが重要と考え、まずは自分を含む2名がシーメンスヘルスケアの技術者から3日間にわたり、操作トレーニングを受けました。今は、全員がエキスパートになるための訓練に取り組んでいます」と現状を説明。「求められる情報を、より正確にきれいに撮影して提供するのが私たちの任務。医師と技師が違う方向を向いていたら、臨床や研究に必要な画像やデータを得ることができません。医師や看護師をはじめ医療スタッフとこれまで以上に緊密なコミュニケーションをとるとともに、チームが一丸となって検査技術のさらなるスキルアップを図っていきます」と力強く話します。

中心になってネオトムアルファの導入手続きを進めてきた診療技術部の川又郁夫部長は、「学校法人東海大学の本部をはじめ、病院本部や病院のスタッフ、医学部の先生方、財務・ファシリティユニットを中心とした職員の皆さんの協力により、迅速に滞りなく稼働を開始できました。最先端の高度医療を提供する大学病院として、ネオトムアルファを導入した意義は大きいと考えています。これを機に、医療機器を扱う技師の育成にもさらに注力し、医療や医学に貢献できるよう力をつくしていきたい」と話しています。