医学部医学科3年次生の椿さんが日本細菌学会関東支部総会で「学生優秀発表賞」を受賞しました

医学部医学科3年次生の椿翔吾さんが、10月22日にオンラインで開催された第105回日本細菌学会関東支部総会で「Klebsiella pneumoniaeの細胞外小胞を用いたsmall RNAの宿主細胞内送達」をテーマに研究成果を発表し、「学生優秀発表賞」を受賞しました。

Klebsiella pneumoniae(クレブシエラ=肺炎桿菌)はヒトの腸管内に共生する細菌ですが、免疫力が低下した患者や高齢者に肺炎や肝膿瘍を引き起こします。また、近年は大腸がんとの関連も指摘されています。しかし、クレブシエラがどのようにヒトの細胞と相互作用し、この様な病気を引き起すのかほとんどわかっていません。そこで椿さんは、基礎医学系生体防御学の津川仁講師の指導の下、クレブシエラが産生する細胞外小胞(菌体の外膜が剥がれて形成される微粒子。内部には蛋白質やRNAなどの菌体成分が含まれる=Bacterial EV)に着目し、クレブシエラがBacterial EVを用いて菌体成分をヒトの細胞内へ送達していることを見出しました。

津川講師は、「病気の発症に関わるクレブシエラとヒトの細胞の相互作用の1つが明らかになったのは大きな一歩。この成果は、生体内でBacterial EVの挙動を制御することによる新たな細菌感染症の予防・治療法の研究開発につながると大いに期待されます」と評価。

「椿さんは好奇心旺盛で、論文を読んだり質問したりしながら自分なりに実験の条件を工夫するなど、積極的に研究に取り組んでいました。実験結果が出るまでの待ち時間に勉強するなど勉学も手を抜かず、難しい課題に立ち向かうガッツと集中力がある。とても鍛えがいがあります」と語ります。

椿さんは、実習科目『感染と防御』の内容について津川講師に質問したことを機に細菌と宿主の関係に興味を持ち、2年次生の春休みから本格的に研究を開始しました。「課題を見出し、仮説を立て、実験と検証を繰り返して結論を導き出すという一連の流れはもちろん、実験器具の使い方から発表スライドの作成まで、すべてを教えていただきました。津川先生が共同研究されている慶應義塾大学や東京医科大学の研究者を訪ねてアドバイスをいただき、研究の面白さや奥深さ、醍醐味を知るとともに、研究は一人ではなくチームで進めるものだと体感することもできました。初めての学会発表で受賞できて大変うれしく、先生方のおかげと感謝しています」と話します。「当面の目標はこの成果を論文にまとめることですが、並行して、クレブシエラから放出されたBacterial  EVがどのように体内を移動するのかを、マウスを使って調べたいと考えています。多くの研究者との出会いは、将来を考えるきっかけにもなりました。臨床での疑問を研究によって解決できる医師・研究者を目指して、さらに勉学に励みます」と意欲を見せています。