総合医学研究所がマイクロ・ナノ研究開発センターと共同で「第18回研修会」を実施しました

総合医学研究所がマイクロ・ナノ研究開発センター(MNTC)と共同し、12月17日に伊勢原校舎で「第18回研修会」を実施しました。この研修会は、研究成果の学内外への広報や若手研究者の育成、医科学分野に関連した他の学部や研究機関との連携促進を目的としたもので、2年前からMNTCと共同開催しています。両機関の研究者らが成果を発表し、特別講演として、東北大学大学院医学系研究科の宮田敏男教授(元・総医研所長)、同大学オープンイノベーション機構の鎌田光明特任教授が登壇。オンラインを併用し、医学部、工学部、理学部、情報理工学部の教職員や学生、大学院生、生命科学統合支援センターの職員ら約130名が参加しました。

初めに、本研究所の安藤潔所長(医学部医学科内科学系血液・腫瘍内科学教授)が、「総医研ではMNTCの喜多理王所長(理学部物理学科教授)の協力を得て、生物現象を物理学の視点から見た研究を進めています。『液‐液相分離現象』を対象とした共同研究は、その一例です。MNTCの研究者と交流できる本研修会は、医学の基礎・臨床研究を進展させる貴重な機会です。活発なディスカッションをお願いします」とあいさつ。続いて山田清志学長が、「この研修会は本学が推進する医理工連携の具体的な形の一つです。今回は情報理工学部の先生も発表しますが、今後は情報系分野との共同研究もさらに進展すると期待しています」と述べました。

続いて、両機関の研究者らが最新の成果を報告し、活発な質疑応答や意見交換を展開。研究活動の分析、推進、支援業務などを担うURA(University Research Administrator)教員として今年度にMNTCに着任した荒砂茜講師は、科研費の獲得状況をはじめ、査読済み論文などを収録したデータベース「Scopus」への登録文献数、論文の被引用数などを基に総医研の研究力を分析し、「総医研の研究力は本学に大きく貢献しており、極めて高い研究力を持つ研究者が継続的に若手を育成している」と報告しました。

特別講演では、東北大学の鎌田光明特任教授が、最先端の科学技術を実用化するための評価法や規制のあり方を考える「レギュラトリーサイエンス」の意義や日本における薬事承認の現状について解説。宮田教授は、自身が取り組んでいる医薬品や医療機器、人工知能(プログラム医療機器)の開発状況を紹介し、実用化されるまでの課題や医師の役割について説明しました。また、基礎研究から臨床研究までを担えるフィジシャン・サイエンティストの重要性を指摘。総医研の平山令明客員教授とともに見出し、安藤所長、八幡崇教授らと基礎研究から取り組んできた「PAI-1阻害薬」が、白血病の治療薬として本学医学部付属病院における医師主導の第Ⅲ相臨床試験に至ったケースを例に挙げ、「基礎研究から臨床試験までを一気通貫に進めたスピード感はアカデミアならではもの。医学におけるアカデミアの貢献は、医療課題を把握し、仮説を立てて科学的根拠を取得する基礎研究と、探索的医師主導治験により薬剤等の有用性をヒトで実証し、新たな医療の価値を創出することにある」と語りました。

また当日は、大学院生や若手研究者10名によるショートプレゼンテーションも実施。参加者の投票により優秀発表者3名を「ショートプレゼンテーション・アワード」として表彰しました。

※当日のプログラムは以下のとおりです。
【開会のあいさつ】
◇安藤 潔(総合医学研究所長/医学部医学科内科学系血液・腫瘍内科学教授)
◇山田清志(東海大学学長)

【研究発表】
◇秦野伸二(総合医学研究所/医学部医学科基礎医学系分子生命科学教授)
「神経変性疾患とLLPS:光変換蛍光タンパク質Dendra2を用いたSQSTM1 /p62-bodyの細胞内動態解析」
◇永田栄一郎(総合医学研究所/医学部医学科内科学系神経内科学教授)
「神経疾患における液‐液相分離現象とイノシトール・ポリリン酸の関連」
◇木村啓志(MNTC教授/工学部生物工学科兼務)
「マイクロ・ナノ工学を技術基盤とする臓器チップと毒性評価試験への応用」
◇荒砂 茜(MNTC講師/University Research Administrator)
「科研費・論文データ等から見る総医研の研究力」
◇細川裕之(総合医学研究所/医学部医学科基礎医学系生体防御学准教授)
「T細胞の初期発生を誘導するNotchシグナルの解明」
◇葛巻 徹(工学部機械工学科教授/MNTC研究員)
「腱・靱帯損傷の再生医療技術の開発に向けた医理農工連携研究」
◇今井 仁(総合医学研究所/医学部医学科総合診療学系健康管理学助教)
「クローン病の病原性共生菌に対するIgA応答の解明と臨床応用」
◇濱本和彦(サイエンステクノロジーカレッジ プロボスト/情報理工学部情報メディア学科教授)
「VRにおけるVR酔い・視線・自律神経活動の関係」

【特別講演】
◇鎌田光明特任教授(東北大学オープンイノベーション機構)
「レギュラトリーサイエンスの実践としての薬事承認」
◇宮田敏男教授(東北大学大学院医学系研究科)
「アカデミアが担う医薬品・人工知能開発」

【ショートプレゼンテーション・アワード受賞者】
1位:中山駿矢(医学部医学科基盤診療系先端医療科学奨励研究員)
「脂質修飾エクソソーム”SPREDs”によるサイトカインストーム制御機構の解明」
2位:芝 燿汰(工学研究科応用理化学専攻修士1年)
「表皮再生促進効果を期待した薬剤担持ナノラッピング材の創製とその機能」
3位:榛葉健汰(サイエンステクノロジーカレッジ博士研究員)
「薬剤評価試験へのオンチップポンプ型多臓器生体模倣システムの活用」