医学部付属病院での「頭頸部アルミノックス治療」開始にあたり、楽天メディカルの三木谷会長が来訪しました

医学部付属病院ではこのほど、頭頸部がんに対する新たな治療法「頭頸部アルミノックス治療」(光免疫療法)を開始しました。これに伴い、同治療で使用する医薬品・医療機器を製造販売している楽天メディカル株式会社代表取締役会長の三木谷浩史氏らが、2月2日に本院のある伊勢原校舎を訪問。東海大学の飯田政弘病院本部長、森正樹医学部長、渡辺雅彦病院長、同治療を担当する耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療科長の大上研二教授(副学部長・副院長)、和佐野浩一郎准教授と意見を交わしました。

この治療は、腫瘍細胞の表面に多く出現するタンパク質に結合する薬剤(光感受性物質)を投与し、薬剤が結合した細胞に特定の波長のレーザー光を照射して腫瘍細胞を死滅させるものです。2021年に世界に先駆けて日本で実用化されました。対象になるのは「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部がん」で、頭頸部(鎖骨から上の脳脊髄と眼球を除く、耳、鼻、口腔、咽頭、喉頭、頸部)に発症し、手術や放射線といった従来の治療が困難な場合や、再発・転移により標準治療による効果が期待できない場合に適用されます。適正な使用による安全性確保のため、特定非営利法人日本頭頸部外科学会に設置された頭頸部アルミノックス治療運営委員会により実施可能な施設や施術する医師の要件が定められ、対象となる患者が決定されます。

当日は、三木谷氏が会社の概要や頭頸部アルミノックス治療の開発の経緯、実施状況について説明。大上教授は、1月31日に治療した本院における第一例目の患者の良好な術後経過について報告しました。また、消化器外科学が専門の森医学部長を中心に、同治療の詳細や、本診療科と楽天メディカルによる同治療に関する共同研究についても意見を交わしました。三木谷氏は、「多くのがん患者さんの助けになればと思っています。引き続きご協力をお願いします」と述べました。 大上教授は、「頭頸部は呼吸や咀嚼、嚥下といった生きるために不可欠な機能を持つ臓器を有するとともに、聴覚・嗅覚・味覚といった五感にも関係し、患者さんのQOLに大きな影響を与える部位です。そうした機能や感覚を最大限に温存・改善するために、体に負担の少ない頭頸部アルミノックス治療は有効と考えます。患者さんの症例を見極めて同治療を適切に提供するために、本診療科の医師4名が定められたトレーニングを受け、多職種による医療チームがシミュレーションを行うなど、万全の状態で治療に臨める体制を整えてきました。医療の進歩により、多くのがん患者さんの命を救えるようになりましたが、嚥下障害が残って食事が楽しめなかったり、声が出せなくなったり、顔の外見が変わってしまったりしてつらい思いをする方もいます。キャンサーサバイバー(がん体験者)が、病気を克服するだけでなく、機能や感覚を維持することで少しでも楽しく日常生活を送れるよう、『治療後の生活の質(クオリティー・オブ・サバイバル=QOS)』の向上を目指して努力を続けます」と話しています。