大学院体育学研究科では湘南キャンパスで10月16日に、2019年度第2回東海大学「健康・スポーツ科学セミナー」を開催しました。学内外から健康やスポーツ科学の専門家を招き、大学院生や教職員に知識の幅を広げてもらおうと、年に4回開いているものです。今回は、早稲田大学スポーツ科学学術院講師の舟橋弘晃氏を講師に招き、「スポーツがもたらす無形の価値の『見える化』」をテーマにご講演いただきました。
開会にあたって体育学研究科の萩裕美子教授があいさつに立ち、「今日参加している大学院生の皆さんは、動作解析や心理学などさまざまな分野の研究をしていることと思います。スポーツの価値については、ここにいる一人ひとりが考える必要のあるもの。また、『スポーツはいらない』と考える人たちに、その価値をしっかりと伝える方法を今日の講義で学んでもらいたいと思います」と語りました。
舟橋氏ははじめに、「国民に夢、感動、誇りなどを与える」といった理由で、選手の強化やスタジアムの建設に公的な資金が使われていることや、具現化しにくく市場で売買できない価値を「非市場財」と呼ぶことなどを説明。スタジアムの建設やメガスポーツイベントの誘致を仮想し、「この事業を実施するために、年間いくら投資できますか?」など、将来的なスポーツ観戦環境の質向上のために失ってもいい金額を市場価値とする「仮想評価法」といった価値推計の手法を紹介しました。舟橋氏は、「スポーツには非市場財が多く、評価や価値推計が難解であるため、価値の可視化はあまり行われてきませんでした。近年は、スタジアムの建設や選手強化にかける予算の検討にエビデンスが求められ、見えないものを『見える化』する手法の需要が高まっています。少しでも関心がある人は、ぜひ研究にチャレンジしてみてほしい」と呼びかけました。講演後は参加者から、国内外の事例や調査方法などに関して多くの質問が挙がり、活発に意見が交わされました。