3月19、20日にオンラインで、「日本スポーツ社会学会第31回大会」が開催されました。同学会は、さまざまな社会情勢をスポーツの視点から捉え、研究・課題解決に向けた取り組みを推進しています。今回は本学が幹事校となり、体育学部の教員や学生が運営を担当。19日には湘南キャンパス1号館グローバルAGORAを会場に、大会実行委員会による公開企画「パラリンピックを学際的に紐解く」を配信しました。
当日は、昨年夏に開催された東京パラリンピックの陸上競技・女子マラソン(視覚障害T12クラス)で金メダルを獲得した道下美里選手(三井住友海上)のガイドランナーを務めた、本学卒業生の志田淳さん(工学部1996年度卒・NEC)と青山由佳さん(体育学部2008年度卒・相模原市役所)と、スチューデントアチーブメントセンターの田中彰吾教授をゲストに招聘。スポーツ・レジャーマネジメント学科の秋吉遼子講師と体育学科の内田匡輔教授が進行役を務ました。志田さんと青山さんはそれぞれ、東京パラリンピックのレースを振り返るとともに、ガイドランナーを務めた経緯や道下選手との練習の様子、大会期間の過ごし方などを説明しました。また、「身体性人間科学」を専門とする田中教授は東京パラリンピックをテレビで観戦していた当時を振り返り、「両腕のない水泳選手が両足を巧みに力強く動かして泳ぐ様子を見ていると、いつの間にか自分の足にも力が入り、腕の動きなしで泳ぐ感じが伝わってきました。このように自己が他者の身体を知覚・共鳴し、自身も経験したかのような感覚は、『間身体性』という概念のもとで整理することができます」と、心理学の観点から解説。「笑顔の人を見ると微笑んでしまう」「人のあくびがうつる」など、間身体性の具体例を紹介しました。
志田さんは、「伴走するときは選手とガイドランナーがテザー(伴走ロープ)を持つのですが、テザーでつながっていると選手の状態がわかることがあります。ともに戦う仲間として一心同体となり、共鳴していたのかもしれません」と振り返りました。また、青山さんの「“なぜガイドランナーとしてそんなに頑張れるのか”と聞かれることがありますが、道下選手がすごく努力している姿を見ていると自分も一緒に夢を実現したいという思いがあふれてきて、それが原動力になっていると感じています」とのエピソードを紹介。田中教授は、「『応援したい』という気持ちがあるということは、すでに相手に共鳴している状態です。点字ブロックの上に自転車を置かない、声のかけ方に気を配るなど、相手の視点に立って行動することも『間身体性』の一つと言えます」と語りました。講演後は聴講者から、障がいのある人との接し方などについて多くの質問が寄せられ、各講演者が自身の経験を踏まえた具体的な対応を紹介しました。