スポーツ医科学研究所がセミナーを開催しました

スポーツ医科学研究所が10月6日に湘南キャンパスで、「東海大学スポーツバイオメカニクス研究室特別企画セミナー」を開催しました。当日はアメリカ・ジョージア工科大学准教授の篠原稔氏による「在米25年の大学教員が伝えたいアメリカでの運動研究と教育の実際」と題した講演を実施。教員と学生ら約40名が聴講しました。

篠原氏は、「学生時代にトライアスロン競技を経験してエネルギー代謝などの循環器系に興味を持ち、現在は運動学習などの神経科学へと研究を進化させています」と自身の研究テーマの経緯を説明。「循環器を含む内臓などの状態を脳へ伝達する迷走神経の働きと運動学習との関係は、動物実験から明らかになっています。ヒトの迷走神経に電気刺激を与える運動学習による学習効果促進などについて調査・研究し、リハビリテーションに生かせる方法を探求しています」と話しました。

さらに、「日本のスポーツ指導において問題視されがちな現場と科学的見地との乖離について、指導現場の方たちに科学的な知識を伝え、それを選手たちに伝達できる“スポーツサイエンスコミュニケーター”や“スポーツ指導者メンター”が必要です」と提言。アメリカでの研究システムや学生の研究生活にも触れ、「アメリカでは学内研究費がなく、研究室の指導教員が外部資金を得ることによりポスドクを雇うことができます。また、アメリカには、『一見、見当違いな質問でもこれに対して被質問者が考察することで新たな方向性が生まれる』とする伝統的な考え方があり、授業でも活発な質疑がなされてそれが新たな発見につながっています。近年は特にAIの発展で工学分野の研究者の躍進が注目され、さまざまな分野が混ざり合いながら研究が発展しています」と最新の動向についても紹介しました。

運営役を務めたスポーツプロモーションセンターの小澤悠特任講師は、「アメリカと日本の研究環境は大きく異なる点が多く、日本のスポーツ指導現場についても、極めて実利的で核心をつく提言をいただきました。特にアメリカでは外部資金獲得のための日常的な活動が研究力や競争力の高さにつながっていると感じました」とまとめました。