平井新講師が『中国学.com』に日中関係についての論考2篇を寄稿しました

政治学科の平井新講師(専門:現代台湾政治、東アジア国際関係論)が、東京大学社会科学研究所「中国学イニシアティブ」が運営する論考サイト『中国学.com』に、日中関係と歴史認識に関する最新のコメンタリーを寄稿しました。

『中国学.com』は、現代中国研究の最前線に立つ研究者がその専門的知見を社会に広く還元することを目的とした学術プラットフォームです。平井講師は、昨今冷え込見つつある日中関係について「政治と消費を切り分ける中国市民のプラグマティズム」や「犠牲者意識ナショナリズム」といった視点から、複雑化する東アジア情勢を読み解いています。

「政治と消費を切り分ける市民のプラグマティズム」:高市総理の答弁をめぐり冷え込みつつある日中関係について、第二大戦をめぐる「歴史認識」問題の持つ重みが日中関係に緊張をもたらす一方で、中国市民の消費行動には変化が見られる点について論じています。政府間の対立や世論調査での対日感情悪化とは裏腹に、日本への旅行客は増加し、アニメ映画『鬼滅の刃』が大ヒットを記録するなど、政治と消費を切り分ける中国の一般市民のプラグマティズムについて論じています。

「犠牲者意識ナショナリズムをどう乗り越えるか」:石破茂首相(当時)の「戦後80年に寄せて」の所感や歴代首相談話を比較検討しつつ、歴史学者林志弦が定式化した「犠牲者意識ナショナリズム」の概念から日中台関係を読み解いています。自国の歴史的被害を強調し道徳的優位に立つ「犠牲者意識ナショナリズム」をいかに乗り越え、地域の主体性や多層的な歴史経験にどのように向き合うべきか、国際関係論の視座から論じています。