A.こまめに拭いたり、着替えたりしましょう
理学部化学科・関根嘉香先生

夏の暑い時期や運動後、汗のにおいが気になる。そんな人は多いかもしれません。そもそも、汗そのものににおいはないのです。汗をかいた後に放置した結果、皮膚の表面にいる細菌が汗の成分を分解するとガスが発生します。これが、汗臭さの原因なのです。
この汗臭いガスを抑えるには、汗をかいたらできるだけタオルで拭いたり、服を着替えたりしましょう。すると汗が皮膚に残らず、臭いが生じにくくなります。さらに効果的なのは、濡れたタオルやウエットシートで拭き取り、体表面を冷やすことです。汗の役割である体温調整機能を他で補えれば追加の汗が出にくくなり、その分汗臭さも抑えられます。
一方で、さらさらとベトベトなど、汗にもさまざまな種類があることは皆さんも体感したことがあると思います。さらさらな汗は水分量が多くて乾きやすく、ベトベトな汗は塩分が濃くて乾きにくいのが特徴です。後者の方が汗臭に変わりやすいため、常にさらさらにしたいと感じる人も多いかもしれません。ベトベト汗を防ぐのは簡単で、定期的な運動で汗をかき、生活習慣を整えることで解決します。
汗臭さだけに着目すると、ガスなんてなければいいと思う人もいるかもしれません。でも実は、皮膚ガスと呼ばれる体の表面から出るガスは体臭の原因だけでなく、体調の変化を知らせる警報器でもあるのです。何もしていないのに普段と違う体臭がするとなれば身体のどこかに異常があるかもしれません。風邪をひいたときに、嫌なにおいが出た経験はありませんか? 最近の研究では、体調やストレス、生活習慣によって皮膚ガスの種類や発生量がかなり変わることがわかってきています。そこに着目し、皮膚ガスから10秒でストレスチェックをできるデバイスを開発し、企業でのメンタルヘルス管理に役立ててもらう研究も進めています。将来的には、体調や病気のサインだけでなく、喜怒哀楽でも変化する皮膚ガスから、人間の感情を読み取れるように出来ればと考えています。また私たちの研究室で膵臓がんの患者さんの皮膚ガスを調べたところ、健康な人とは種類や発生量が違うことがわかりました。これにより、皮膚ガスによってがんの早期発見も期待できるようになっています。
においを情報として活用できれば、ライフスタイルの改善はもちろん、多くの人の健康的な生活の実現にも貢献できるようになります。実はこの分野は、20年前はほとんど注目されていませんでした。それが、がんなどの病気の発見だけでなく、多くの人が関心を寄せるウェルビーイングの増進にも活用できる可能性を秘める分野になってきています。未開拓の分野を少しずつ切り開き、0から1を作る挑戦的な課題でもあります。もちろん、まだまだ謎だらけの分野です。未知への挑戦に興味があれば、ぜひ一緒にやってみませんか。
せきね・よしか 1966年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科応用化学専攻を修了後、日立化成工業㈱筑波開発研究所に勤務。93年に東海大学大学院理学研究科にて博士号(理学)を取得。2000年から理学部化学科に着任。専門は環境化学、室内環境学、皮膚ガス学。