A.自分からアプローチした方が、両思いになる可能性は高まります
理学部情報数理学科・松井泰子先生

好きな人とマッチングするには自分からアプローチした方がいい――これは「当たって砕けろ!」をオススメしたいわけではなく、実は情報数理学のアルゴリズムを使って説明できる問題です。アルゴリズムとは簡単に言うと「手順」のこと。レシピにある手順どおりに進めれば誰でもカレーライスがつくれるように、好きな人とのマッチングにも活用できる「手順」があるのです。
実はこの問題は「結婚安定問題」という名前で広く知られているんです。同じ数の男女それぞれが「好きな人の順位表」を持っているときに、どのようにペアをつくれば、今のパートナーよりも好きな相手と駆け落ちしてしまう可能性のある「ブロッキングペア」をつくらずにマッチングできるかを解くアルゴリズムです。
まず、告白する側(ここでは仮に男性側としましょう)が、1番好きな女性に告白します。告白された女性は相手がいなければマッチングしますが、既にマッチングしていても、後から告白してきた人の方が好きならその相手とマッチングし直します。振られてしまった男性は、自分の順位表の「次に好きな人」に改めて告白します。これを全員がマッチングするまで繰り返すことで、ブロッキングペアのいない安定したマッチングが完成します。
告白する側は常に「自分が一番好きな人」から順に告白していくため、自分の希望が結果に反映されやすいといえます。一方、告白される側は相手を乗り換えることができるため「より好きな人」とマッチングできるわけですが、告白してくれた人の中からしか相手を選べないともいえますよね。そのため、男性側と女性側、どちらから告白するかによってマッチング結果は変わってくるのですが、いずれにしても、好きな人には自分からアプローチした方がマッチングの可能性は高まります。
そのほかにもアルゴリズムは暮らしのさまざまな場所で活用されています。皆さんも、スマホで目的地までの最短ルートを検索したことがあると思います。実はここでもアルゴリズムが使われているんですよ。私が研究している「列挙アルゴリズム」は「看護師のシフト表作成」などに使われています。限られた人数で効率よく働く必要のある夜勤では、チームワークが重視されます。列挙アルゴリズムは「条件を満たす答えをすべて見つける」ことができるので、メンバーの相性や現場の状況を理解した人が、その中から最もチームワークが発揮される答えを選ぶことができるのです。
このように、「数学と人間が協力し合うための橋渡し」をするのが情報数理学の役割だと思っています。AIが飛躍的な進化を遂げているとはいえ、現代社会には問題が山積みです。アルゴリズムはそれらの問題解決の「手順」を導き出す可能性を秘めた、夢のある学問なのです。
まつい・やすこ 1964年東京都生まれ、東京理科大学工学部卒業後、同大学院工学研究科修士課程修了。博士(工学)。東京都立大学理学部数学科助手を経て、98年に東海大学理学部情報数理学科講師。2014年より現職。専門は、オペレーションズ・リサーチや組合せ最適化、アルゴリズムの開発など
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