大学院総合理工学研究科博士課程の澁谷優我さんがFirst Author(第一著者)、小口真一准教授がCorresponding Author(責任著者)を務める論文が、国際学術論文誌『Organic & Biomolecular Chemistry』の表紙を飾りました

9月7日にRoyal Society of Chemistry(英国王立化学会)が発行する国際学術論文誌『Organic & Biomolecular Chemistry』(Q1ジャーナル)に、澁谷優我さん(大学院総合理工学研究科博士課程3年次生)と大村詩織さん(大学院理学研究科化学専攻修士2年次生)、伊藤朱音さん(同専攻2022年卒)、大場真教授(工学部生物工学科)、小口真一准教授(理学部化学科)が発表した論文『Epoxidation of olefins using diaryltellurium dicarboxylates(ジアリールテルリウムジカルボキシラートを用いたオレフィンのエポキシ化)』に関する図表が表紙を飾りました。

澁谷さんらは、小口真一准教授(理学部化学科)の研究室に所属。テルル原子は無機化合物としてガラスの着色剤、太陽電池、DVD‐RAMなどに利用されている、一方有機テルル化合物の研究例はほとんど無い事に注目し、2016年から研究に取り組んできました。この論文では、有機テルル化合物を利用した、オレフィンの効率的なエポキシ化の方法とその反応機構ついて報告しました。新規な超原子価有機テルル化合物を触媒に用い過酸化水素尿素を酸素源とした新たなエポキシ化を見出すと共に、触媒である「ジアリールテルリウムジカルボキシラート」と過酸化水素が反応すると、反応系内で有機テルル過酸化物の形成を介して反応が進行する事を明らかとしました。これまで有機テルル化合物を用いたエポキシ化反応は発表されていなかったことなどが、高く評価されました。

表紙に用いられた図表は有機テルル化合物がエポキシ化する様子を表したもので、本学の田中陵二客員教授(相模中央化学研究所主任研究員)が撮影した金属テルルの写真に、卒業生の佐々木(旧姓:中村)華音里さん(理学研究科化学専攻2015年卒)が分子モデルを描いてデザインしました。

澁谷さんは「取り組み始めてから6年目になる研究が実を結んで、うれしく思います。マイナーな研究ではありますが、表紙を飾ったことで有機テルル化合物への注目度も高まるのではないでしょうか。今後は、反応を利用した応用研究に取り組んでいきます」と話し、大村さんは、「主に反応条件の最適化や化合物の物性データ収集などに取り組んできました。論文に自分の名前や研究データが掲載されるのは初めてのことなので、とても光栄です」と語っていました。

指導にあたった小口准教授は、「有機テルル化合物への注目が高まるとともに、研究利用が進むきっかけになる学術的価値の高い論文だと思います。基礎研究は化学の根底における重要な存在です。この評価は学生たちにとってさらなる研究への励みになったのではないでしょうか」と話しています。