観光学部観光学科の遠藤晃弘講師のゼミに所属する4年次生がコロナ禍の観光について調査した成果をまとめた調査報告書「コロナと観光」(Report of Survey COVID-19 AND TOURISM)が、このほど完成しました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて激変する観光業界の今を学生の目線で調査・研究してまとめたものです。学生たちは昨年春ごろ、「コロナと観光」に関連して研究を希望するテーマを発表し、グループに分かれてフィールドワークやインタビューを行ってきました。
「コロナ禍で成功したマイクロツーリズムの取り組み~『NIPPONIA 小菅 源流の村』の取り組みを事例として~」と題したグループは、山梨県北都留郡の小菅村の「NIPPONIA 小菅 源流の村」に着目。村内に点在する約100件の空き家を分散型の宿泊施設にリノベーションし、ほかの客と接することのない3密回避の宿泊・観光を提供している様子や、自宅から1~2時間で行けるマイクロツーリズムを提唱し、観光客がコロナ前から倍増して雇用が生まれ、古民家を再生させて空き家が減るなどの効果が生まれていることをまとめました。保坂奈那さんは、「コロナ禍で近距離旅行への関心はより高まったと感じています。1度来て終わりではなく、愛着を感じてもらう工夫を行い、関係人口につなげていくことが今後の課題。持続可能な観光を形にできれば、コロナ禍の観光として成立するのでは」と提案しました。
「新しい観光~混雑回避のためのツール~」をテーマにしたグループは、神奈川県藤沢市の江ノ島周辺の混雑具合をインターネット上で確認できる「ENOMAP」について現地調査。3密を回避した観光を求める人が増える中、ENOMAPはニーズに合った取り組みであるとしたうえで、「ネット上で“空いている”と表示された場所も、今の私たちから見ると混んでいると感じました」と梶原遼太郎さん。藤沢市観光協会にインタビューした際にも、現場で混雑具合を判断する際に“コロナ前の混雑状況が基準になってしまっている”といった課題が聞かれたといい、「コロナ収束後、観光に行ける環境づくりが大切になってきます。藤沢市の取り組みも、観光を復活させるヒントになるのではないでしょうか」と期待を語りました。
指導に当たった遠藤講師は、「新型コロナの感染拡大によって教育の現場は大きく変わりました。限られた条件の中でしたが、学生たちが自ら考え、問題意識を持って行動した結果、この調査報告書が完成しました。3年次生も同様の取り組みを始めており、こうして困難な状況に直面する観光の現場を調査可能な方法で丁寧に調べることで、これからの観光のあり方について考えていきたい」と話しています。