観光学部観光学科の開講する「ファシリティ・デザイン論」の授業で7月2日、特別講義「『和菓子ミュージアム東京』の企画立案に当たって-東京ディズニーランドとジブリ美術館の経験を基に-」を実施しました。本学科の小澤考人講師が担当するこの授業は、ツーリズム・観光における「施設」の重要性について学ぶもの。観光地は観光資源と観光施設(ファシリティ)から構成されるという構図のもとで、魅力的な観光地の創出や地域活性化に向けた観光施設の役割と可能性・課題を考えていくことを狙いとしています。この春セメスターでは約120名が受講し、自然や文化遺産などの観光資源を生かし、観光地として成り立たせる施設全般について、基本的な視点や具体的な建物の概要についての講義を展開してきました。
小澤講師も理事として参画する財団法人和菓子文化研究所(鈴木茂理事長)では、2020年の東京オリンピック開催に合わせてテーマ型ミュージアム「和菓子ミュージアム東京」の設立企画を始動させています。本授業ではカリキュラムの後半でこのミュージアムをテーマに据え、施設のデザインとマネジメントについて学んできました。学生ならではの視点でアイデアを提供するとともに、アイデアコンペを通じて企画構想に協力していく「参加型教育プログラム」として展開することを目的としています。
今回の特別講義は、ミュージアムの総合プロデューサーを務める盛田茂氏(立教大学アジア地域研究所特任研究員)が担当。三井不動産から開園間もない東京ディズニーランドに出向した経験や三鷹の森ジブリ美術館の建築などに携わってきた盛田氏は、「和菓子ミュージアム東京」の設立にあたり、必要な考え方を解説。「まず事業で何をしたいか”社会的使命”を明確にすることで、価値観を共有することが大切。コストや効率性を考えるだけでは不十分、企画に関係したすべての人々が楽しめるものでなくては、来場した方に満足していただくことはできません」と語りかけました。
また、東京ディズニーランドと三鷹の森ジブリ美術館の違いを解説し、「サービスについて、ディズニーは徹底的にマニュアル化し、ジブリ美術館はとことん子どもの目線になって考えています。方向性が違うように見えますが、心から楽しんでもらいたいという思いは共通しています。和菓子ミュージアムでもその思いを基礎に、和菓子を通して日本文化を伝えられる施設にしたい。若い皆さんの元気なアイデアを待っています」と話しました。参加した学生からは、「自分の意見がミュージアムに反映されるかもしれないという、大きな期待があります。日ごろの学びを生かして、よいアイデアを出したい」「和菓子の施設を通じて、日本文化を発信する新しい取り組みに興味を持ちました。観光に対する見方を、また1つ増やすことができました」と聞かれました。
小澤講師は自身のゼミナールに所属する学生や受講者を対象に、ミュージアム構想に関するアンケートも実施しており、学生ならではの視点から建物のイメージや展示内容、展示物の見せ方などについての意見を募っています。「リアリティを持って観光施設を学んでほしいという思いでいたところ、和菓子文化研究所の鈴木理事長や盛田理事のご協力のもと、この教育プログラムが実現しました。学生たちの反応は想像以上に高く、継続してプロジェクトに関わりたいという声も多くあり、頼もしく感じています。実践的な学びの場を、今後も提供していきます」と語っています。