博士課程2年半で論文掲載2報、熊本あか牛に対するリモナイトの効果が国際学術誌『Animals(IF=2.96)』(ウェブ版)に掲載されました

大学院生物科学研究科の原川健太郎さん(総合農学研究所特定助手)が筆頭著者として執筆した研究論文「Longitudinal Change in Rumen-Associated Bacterial Communities Following Aso Limonite Supplementation in Japanese Brown Cattle」が、国際学術誌『Animals(IF=2.96)』(MDPI社)のウェブ版に掲載されました。

熊本系褐色和種(あか牛)は熊本・阿蘇地域で1,000年にわたり人と共に生きてきた和牛です。この阿蘇地域には阿蘇カルデラに堆積した酸化鉄などを多く含む阿蘇リモナイト(以下、リモナイト)が堆積しています。阿蘇地域の畜産農家では、経験的にリモナイト給餌が母牛と子牛の健康に良いと信じられていましたが、その効果の科学的データは存在していませんでした。

原川さんは以前、妊娠後期のあか牛にリモナイトを与えた時のルーメン細菌叢を調べ論文(Harakawa et al., 2024 Animals)にまとめました。今回の研究では木之内 均副学長が所有する大津農場において、妊娠後期から分娩後90日、計195日間のあか牛に対するリモナイト効果を論文にまとめました。
一般農場でルーメン液を直接採取することは技術的に可能ですが、実践的ではないため、反芻が一番高い時間を狙って非侵襲的な「口腔スワブ法」を用いて、反芻残渣(サンプル)を採取しました。このサンプルにはルーメン関連細菌叢だけではなく、口腔細菌や古細菌も存在します。それらを先行研究のデータも参考にしながらさまざまな統計処理を駆使し、ルーメン関連細菌叢を抽出して更なる解析を加えました。

リモナイト非投与(コントロール)群では産前産後にルーメン細菌叢が変化しましたが、リモナイト投与群では比較的安定した細菌叢を示しました。しかし、それでもリモナイト特異的な細菌群(taxa)の変化が見られました。また、分娩後14日から84日までの子牛の体重を2週間ごとに計測。試験期間中、リモナイト投与群の方が有意に高い数値を示しました。

原川さんは、大学院農学研究科で植物学を学んだ後、社会人として11年間働き、その過程の中で地元に貢献する研究がしたいと思い立ち、分子繁殖科学研究室に所属することになりました。指導教員の今川和彦教授(総合農学研究所所長)は、元々繁殖や内在性レトロウイルスの研究をしており、リモナイト・飼料・栄養やルーメン細菌叢の研究は初めてであったため、原川さん自らが努力することで本研究を自分のものにしていきました。

原川さんは、約1,000年守り継がれてきた阿蘇の草原の次の1,000年を考えて研究しています。あか牛をベースに草原を再生できれば、家畜(特に牛)の生産コストを下げることができると考え、北海道を除く本州型の牛生産システムの構築を目指しています。実際、あか牛を本学阿蘇フィールドに放牧したサンプリングも終了し、その解析結果を待っている状況です。また、口腔スワブだけではなく、血液や腸内細菌も採取していることで、リモナイトがルーメン細菌叢だけではなく、どのように牛の機能を向上させるのかのメカニズムの解明に迫ろうとしています。

▶本研究論文はこちらから見ることができます。
https://doi.org/10.3390/ani16091419

Harakawa K and Imakawa K
Longitudinal Change in Rumen-Associated Bacterial Communities Following Aso Limonite Supplementation in Japanese Brown Cattle
Animals (Basel) 2026, 16(9), 1419; doi.org/10.3390/ani16091419

▶過去の研究論文
Harakawa K, Kawarai S, Kryukov K, Nakagawa S, Moriya S, and Imakawa K. Buccal Swab Samples from Japanese Brown Cattle Fed with Limonite Reveal Altered Rumen Microbiome. Animals (Basel). 2024 Jul 3;14(13):1968. doi: 10.3390/ani14131968.

※『Animals(IF=2.96)』は動物の生態・生理・栄養・繁殖学分野の国際学術誌です。