学長挨拶

先駆けであること-Think Ahead, Act for Humanity-
「QOLの向上」に資する世界標準の人材育成を目指して

東海大学 学長 山田 清志

東海大学 学長 山田 清志

新しい知識や情報・技術が社会のあらゆる領域での基盤として飛躍的に重要性を増している現在、グローバル化やパラダイム転換、技術革新はかつてないスピードで進展し、もはや大学は知識の伝授だけでその使命を全うすることが出来ない時代となりました。それに伴い、社会が求める人材像も大きく様変わりしていることは言うまでもありません。

一方、大学は、多様な学生を迎え入れていますが、社会にとって有為な人材の育成をその使命とする今、大学教育への期待が極めて大きなものになってきています。今日の大学に求められるのは、社会の変化を機敏に察知し、育成すべき人材像を明確にして、それを実現するカリキュラムを策定し、果敢に実行に移すことです。そして常にその成果を検証し、改善につなげていくことです。そのためには、教職員の意識改革を伴った大学改革を絶え間なく、そしてダイナミックに展開する実行力と機動力が欠かせません。

創立者松前重義は、1942年の東海大学の創立にあたって、「人文科学と自然科学の融合による確固たる歴史観、国家観、世界観を把握せしめる」ことを教育理念として掲げました。以来、今日に至るまで、東海大学は幅広い視野を持って人生の基盤となる思想を培うことの重要性を、学生たちに説き続けてきました。具体的には、現代文明の諸問題と向き合い、それらに対する考え方を学ぶ「現代文明論」をカリキュラムの核として位置づけ、多彩な「現代教養科目」を開講。文系・理系の枠にとらわれない文理融合型の学びを重視することで、総合的・複眼的思考力、専門を生かすための土台づくりと豊かな人間性を育むことのできる教育を展開しています。

学生が社会的実践力を培う「チャレンジセンター」では、学部・学科の枠を越えて集まった学生たちが、様々なプロジェクト活動を行っています。多様な仲間と集い、意見をぶつけ合いながらプロジェクト活動を進めていく過程で、現代社会を生き抜くために必要な力を身につけます。本学ではこうした力を「自ら考える力」「集い力」「挑み力」「成し遂げ力」の4つの力と表現し、既成の概念にとらわれず、新しいことにチャレンジする人材の育成を着実に実践して参りました。また、文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」の採択を受け、地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目的として取り組んでまいりました「To-Collabo(トコラボ)プログラム」は、2017年度でプログラムの終了を迎えましたが、この事業で培った地域連携の取り組みを2018年度から「パブリックアチーブメント型教育」として受け継ぎ、全学的なカリキュラム改革を実行いたしました。今後も地球市民として未来を創造していく人材の育成に取り組んで参ります。

研究面においては、人文・社会系から理・工学、医学、海洋学、農学に至る幅広い分野で先端的な研究が進められているほか、それらの様々な分野がコラボレートした学際的なアプローチで、世界に情報発信し得る有用な研究活動を活発に展開しており、イノベーションの創出に大きく貢献する「研究の峰」を形成し、その研究成果は高く評価されております。今後は文系分野においても積極的に「研究の峰」の形成に取り組み、全学で研究の活性化に取り組んで参ります。また、建学以来、大学で生まれた「知」を社会に還元することを理念とする本学では、産官学連携による研究活動にも組織的に取り組み、組織対組織の新たな産学連携体制の構築を推進しています。

さらに、東海大学のもうひとつの特色が活発な国際交流活動です。本学では、学術面から文化、スポーツまで幅広い分野で国際交流を推進すると共に、奨学金や単位認定など充実した制度で、海外への派遣留学や外国人留学生の受け入れを行っています。なかでも旧ソ連邦や東欧諸国との交流、タイ王国での大学設立支援等をはじめとした長きにわたる国際貢献活動に加え、最近は中東や南米に対する教育・研究交流にも力を注いでおります。さらに2017年度は、文部科学省の「大学の世界展開力強化事業~ロシア、インド等との大学間交流形成支援」に採択され、ロシアとの関係において、本学の国際交流活動の独自性に対して国際社会からも高い評価を得ています。

東海大学は、2017年に建学75周年を迎えました。受け継がれてきた伝統を守りつつ、グローバル時代を牽引する世界標準の人材を育成してまいります。常に先駆けであることを視野に入れ、世界に存在感を示せる大学であるべく、2018年4月には文化社会学部と健康学部を開設し、大幅なカリキュラム改定を実施いたしました。これからも本学は、大学の使命である、「教育」「研究」「社会連携」「国際連携」を果たすべく、人々の暮らしや社会のQOL(=Quality of Life)向上のために総合大学としての総力を結集し、全学を挙げて教職員協働の下、取り組んでまいります。

創立者松前重義は、次代を担う若人たちに「若き日に汝の希望を星につなげ」と熱く語りかけました。学生の皆さんが東海大学での学びを通して、それぞれが抱く希望を明確にし、その希望の実現を目指して、人間として大きく成長していく場を提供することこそが、東海大学の存在の意義であり、使命であります。

東海大学の Quality of Life(QOL)の定義
東海大学におけるQuality of Life(QOL)とは、人生の質のことを指し、人間や社会との関わり方について、人として望ましい思考や行動を涵養し、人生を幸福に送ることを意味する。また、ここで言う「幸福」とは、医療分野で用いられている健康保全等の専門的な意味にとどまらず、身心の健康のほか、良好な人間関係、教育研究環境の充実や快適な職場環境など、様々な観点から計られるものである。